SHORT Novel 真相心理なんて、皆わからないモノですよ。 [臨静 人は満足する事を知らない。 新たなモノを手にすれば、より新しいモノをより貪欲に求める。 そしてそれは、感情もおなじこと。 「好きだ」 最初はそれだけでよかった感情。心の中だけに止どめられた感情。 だがそれは、自らの欲により、包みを破り外へと溢れ出す。 「大好きだ」 次第に心の中だけでなく、相手からも愛されようとし始める。 その欲を叶える為に、人間は動き出すのだ。 愛して…愛されて…そして人間は『恋』から『愛』を実感する。 「愛してる」 好きから愛してるに変わると、人間はより愛されようとまた動き始める。 動いて動いて動いて… 自分の体が動かなくなるまで…。 動いて動いて動いて…人はそれで愛を知るんだ。 「言ってる意味分かる?」 止まったら…愛されなくなるんだよ。 「欲があって好きという感情が成立するんだ。求めて求めて…人間はそうやって愛を得る」 君はどうだ? 「君は自分から求めた?愛という存在を求め続けた?」 してないだろ? 「君は途中で愛することを…愛されることを止めたじゃないか。愛を諦めたんだ。違うか?」 俺は、自分の反対側に座る男に問い掛けた。しかし、そいつは黙ってばかりで口を開こうとはしない。 「…図星?」 俺の言葉にビクッと反応し体を強張らせると、彼は俺を恐れる様な瞳でこちらを見ていた。 何を怖がる? 事実を言われて現実が怖いのか? それともその現実を突出した俺が怖いのか? ハァッ、と深いため息をつきながら、俺は嘲笑を浮かべながら彼に話を続けた。 「ねぇシズちゃん…」 「…なんだよ…」 「俺が人間を好きなのは、そういう欲にまみれている姿で、更に深く濃い暗い路へと自分から進んで行くからなんだ。自分では一番楽だと思っている路が、本当は蛇の路だと知らないなんて面白いだろ?それと同時に哀れだと思わないか?」 「…手前は違うのかよ」 「勿論、俺もその一人と言えるね。唯一つ違うのは、蛇の路と知っていながら俺は進んでいるってこと」 「なんで…なんで自分から行くんだ?わざわざそんな泥を被りに行く様な真似を…」 「じゃないと人間達を見れないだろ!?それを見たいなら、自分も同じ路を通らなきゃね!他の路から、その路を見ることなんてできない!」 嗚呼なんて素晴らしいのだろう! 俺にとっては泥道なんてレッドカーペットにしか見えない! そんな俺を見て、シズちゃんは静かに呟いた。 「やっぱり…分かんねえ」 *** 臨也に問い掛けられる度に恐怖を感じる。心の何処かで暗い何かに怯えてる。 「何が分からないの?」 そんな俺を見て、臨也は不機嫌な気持ちをのせて言葉を吐いた。 「こんなの、人間じゃない運び屋だってわかるのに!なんでシズちゃんが分からないの?!」 分かろうとして無いんじゃないの? 臨也のその一言を、心臓がズキッと痛み肯定した。 「そうだよ…」 俺は… 「俺は分かろうともしてねぇ!分かりたくもねえ!何故人間は人を愛する?なんで手前は人間を愛する?愛ってなんだ?人間ってなんだ?欲ってなんだ?俺には知らねえもんばかりだ!俺にとって必要ねえもんばかりだ!この23年生きて来て必要ねえと思ったモノを、なんで今更になって理解しなきゃならねえ!」 それはもう、八つ当たりに等しかった。 俺には持って無いモノを、分からないことを、こいつは意図も簡単に理解し取り込む。 羨望といっても良い感情と、恐怖が入り混ざって作り上げた感情だ。 「分かんねえ…分かんねえだよ…」 頭を押さえながら俺は呟く。 何故俺には理解出来ない… 俺は人間じゃないのか? 化物ですらないのか? 「畜生っ…」 *** そんなシズちゃんを見て俺はシズちゃんがすごく哀れに見えた。 何故だろうね。 嫌いな相手に同情してるんだ。 だって 愛を知らないなんて悲しすぎるだろ? いくら自分から捨てたとしてもさ。 それに… 「それならさ、シズちゃん」 「…臨也…?」 「俺がシズちゃんを愛してあげる」 シズちゃんが愛を知ってどうなるか、すごく興味があるんだ。 「俺がシズちゃんをもっと求めるから、シズちゃんは俺を求めてよ」 愛を教えてあげるよ。 *** 「い、臨也…」 愛なんて要らない… 自分から捨てたのに… 「大丈夫…大丈夫だよ」 俺は… *** 愛は与えられるモノ… そして求めるもの… 愛とは、欲の塊… 『もっと求めて…』 [*前へ][次へ#] [戻る] |