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庭球ゲーム
word end(真田)
あのサバイバル合宿から帰って来て以来、真田の様子が少しおかしい。いや、おかしいというよりは浮かれていると言った方が正しい

真田「蓮二、メールで小文字を打つにはどうしたらいいんだ」
柳「ああ、それなら…ここをこう押してだな…」
真田「ふむ…難しいものだな」

電話があるのだからメールなど必要あるまい、と完全に連絡用のみに持ち歩く固定電話と化していたケータイの更に滅多に使われていなかったメール機能を、ただとりとめない話をする為だけにわざわざ打ち方を習ってまで使ってみたり(ただし、お下がりのガラケーのままであることに変わりはないが)

幸村「弦一郎、何を読んでいるんだい?」
真田「謀将、直江兼続だ。面白いからと勧められたんだが…どうしてなかなか読み応えがあるぞ。こっちの伊達政宗も良かった。戦国武将の生き様には習うべきものがあるし、その心意気はテニスをする上でも活かせそうな気がする」
幸村「そうなのか?弦一郎がそこまでいうなら、俺も読んでみようかな」

元々、好きなジャンルではあったらしいが、最近は特にやたらに歴史書づいて、次の休みには神保町に時代小説を買いに行くとまで話している

真田「丸井、その菓子は…」
丸井「何だよ真田、練習終わってから食ってるんだからいいだろぃ。文句言うなよ」
真田「いや、文句があるわけではない。ただ、新製品だったなと思っただけだ。その手の菓子もたまに食う分にはまぁ…悪いものではないからな」
丸井「…真田?」

今までなら説教たれる以外には見向きもしなかった菓子類に関心を示したり、あまつさえそれについて詳しかったり…普段の生活態度やテニスに対する姿勢は以前とまったく変わらないだけに、変わった部分があからさまというか…

仁王「…完全に色ボケとるのう」

そう、真田が変わったのは合宿で出会った山野辺ひわが彼女になってからだ。現に彼が変わった項目は全て山野辺に関することばかりである。真田にも中学生らしい部分があったのかと感心する反面、複雑な気持ちになる。それは自分の気持ちのせいだと分かってはいるのだが…

仁王「…真田。なんじゃ、そのカバンにつけとるのは」

部活が終わり、着替えて部室を出ようとした矢先にロッカーから取り出した真田のカバンに昔の硬貨が並んだ絵の描かれたストラップがついているのに気づいた

真田「ああ…これはもらった物でな」
仁王「ほぅ」

やはり浮かれている。質実剛健がモットーな真田がシンプルな物とはいえストラップなんてものを今までのならカバンにつけるどころか、受け取ることすらしなかっただろう

真田「古銭の形がテニスボールになんとなく似ていると言っていたが。あと六文銭の家紋は武将の真田幸村のものだから、名前繋がりだそうだ」

聞かれてもいないことをどことなく嬉しそうに語る真田に何だかやたらと腹が立つ。好きな奴が…山野辺が幸せならばそれは純粋に喜ばしいことだとは思う。ただ、彼女を幸せにするのが自分でないということが不満だと思うだけで

仁王「せいぜい大事にしんしゃいよ。おんちゃんみたいな堅物にモテ期なんてそうはこないからのぅ…これを逃したら次はないぜよ」

つい腹立たし紛れに嫌味を言ってしまったので馬鹿にするなと鉄拳の一つくらいは飛んでくるかと思って振り向いてみれば、真田は神妙な顔つきをしている

真田「言われずとも大切にするに決まっている。彼女は…俺の唯一無二のかけがえのない女性だからな」

馬鹿正直に真っ向から返されて少々面食らう。やはり、真田は変わった。こんな風に人前で恥ずかしげもなく告白をしてしまうなんて…恋は人を人を変える。コイツも俺も

仁王「言うねぇ、真田。俺はもうちくと自分がしたたかな男だと思っとったがな」

それこそ、俺は気になった相手は人のものであろうと平気でちょっかいかけるくらいの奴だと思っとったけど…こんな風に見せつけられては手を出す気も失せてしまう

真田「何だそれは」
仁王「いや、なんでもない。俺、そろそろ帰るわ。じゃあの」

そういって手を振りながら部室の外に出る。面白くないけど完敗じゃのうと、思わずため息がこぼれる。今度、山野辺に会うことがあったら揃いの可愛いらしいクマのマスコットでも渡して、真田に似とるから一緒につけたらどうじゃ?とでも勧めてみることにしよう
。いとしの彼女から勧められては真田も断る訳にはいくまい。二人の邪魔しようとは思わんから、このぐらいのイタズラ、許されてもええじゃろ?そんなことを考えたらほんの少しだけ胸がすく感じがして苦笑いをこぼした

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あとがき

タイトルはよくあいつがあんな風になるなんて…からくる皮肉的な感じ
もしも山エンドで真田とくっついたらver.でもまだまだ話も書きたいのでこれで終わりではないです
仁王くんは横恋慕とか間男みたいなポジションが似合うと(笑)

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あきゅろす。
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