庭球ゲーム
kiss me please(遠山)
遠山「なぁマツリ〜、ちゅーしよ!」
付き合い始めたばかりの恋人にいきなりそんな風に言われて、思わず飲んでいたジュースを吹き出しそうになってむせる。平気か?!と慌てた様子でテーブル越しにこちらへと身を乗り出してくる金ちゃんにちょっとびっくりしただけだから…と口元を抑えながら答える
御園「…金ちゃん、誰かに何か言われた?」
遠山「な、何で分かったん?」
マツリはエスパーだったんか?!とまた突拍子もないことを言い出して驚く金ちゃんの顔を眺めてため息をつく
御園「そんなわけないでしょ。金ちゃんが変なこと言い出す時はだいたい漫画か誰かの受け売りだし」
遠山「ワイ、またなんか変なことゆうたんか?」
やっぱり自覚してなかったらしい。私たちは手を繋ぐぐらいの仲で、キスなんてまだしたこともないのだから…恋愛方面にはとてもうとい金ちゃんが自発的にそんなことを言うはずがないとは思った
御園「変っていうか…金ちゃん、そもそもちゅーがなんだか分かってるの?」
遠山「知らん!でも、謙也がカレカノやったらちゅーぐらいしたんか?って、聞くから…付きおうとったらするもんなんやろ?」
謙也さんめ、余計なことを…
御園「まぁ、恋人同士が絶対するってわけじゃないけど…。それに、そういうのは意味が分からないのにするものじゃないと思うよ」
遠山「そうなん?せやったら、ちゅーってなんか教えてぇな!そしたら、できるんやろ?!」
御園「ちょ、金ちゃん!声大きいって…!」
そう元気いっぱいに聞いてくるのが金ちゃんでなかったらわざとさせようと思っているのかとも勘ぐってしまいそうだが…金ちゃんに限ってはそんな器用な真似はできそうにない。あと、すっかり忘れかけていたがここはファーストフード店の中だ。どうしようかと困っていた所に、世話焼きおかんよろしく丁度いいタイミングで飲み物を持った白石さんが顔を出す
白石「なんや、やたらうっさいのがおるなと思ったら金ちゃんかいな。また、御園さんにわやくちゃゆうて困らせとんのやろ」
御園「白石さん」
遠山「わやくちゃなんかゆうとらんし!ちゅーってなん?って、聞いとっただけや…!」
白石「な!そないなこと聞いたんかい…!」
そら、御園さん困り果ててまうやろ!呆れた様子で声を荒げる
白石「恋人同士のことやから他人があんまし口出すんは野暮かもしれへんけどなぁ、金ちゃんはちょお遠慮っちゅうもんがなさすぎや。おおかた、意味もわからんと聞いとんのやろうけど…今、御園さんが困っとるのくらいは分かるやろ?そんなんやったら御園さんも呆れて愛想つかしてまうで」
遠山「う…愛想なんてつかされへんもん!だいいち、白石には関係ないやろ!」
白石「確かに関係あれへんかもしれへんけどな、女の子が困っとるのにほっとけないやろ。そんなことも分からんくらい、金ちゃんは自分勝手な悪い子やったんか。ほな…」
遠山「ど、毒手は卑怯や!白石のアホ〜!!」
御園「あ、金ちゃん…!」
テーブル席から飛び上がるように抜け出ると、止める間もなくそのまま席の合間を勢いよく駆け抜けて外に飛び出してしまう。あとに残されて唖然としていると白石さんが声を掛ける
白石「すまんな、余計なことしてもうたか」
御園「いえ…真面目にどうしようか困ってたとこでしたから」
白石「空気の読めへんアホの子やけど、見捨てんといてやって」
御園「見捨てるなんてしませんよ、確かに金ちゃんは幼いとこあるけど…私、金ちゃんのこと好きですから」
白石「お熱いやっちゃ」
御園さんみたいなええ彼女がいて金ちゃんは幸せもんやね、と笑いかける
白石「あのゴンタクレやったら多分、角の公園にいてると思うで。ここは片しとくからはよいっちゃりぃ」
御園「ありがとうございます」
白石さんに頭をさげて、席を立つとそのまま店の外に出る。ひと気もまばらな公園につくと、花壇のすぐ近くの木陰に置かれたベンチにしょんぼりとした様子で座っている金ちゃんの姿を見つけて、金ちゃんと声をかける
遠山「マツリ…」
御園「よかった、すぐに見つかって」
眉を下げ、こちらを見つめてくる金ちゃんを見つめ返してそのまま隣に腰をかける
遠山「マツリ、さっきはごめんなぁ。ワイ、マツリのこと困らすつもりはなかったんやけど…」
御園「いいよ、もう」
遠山「白石のゆうとること、当たっとるわ。
人んこと困らして、自分勝手にあれこれゆうて…マツリ、ワイのこと嫌んなった?」
御園「…ならないよ」
よしよし、と頭撫でて笑いかけると、金ちゃんがホッとしたような顔をする
遠山「ワイなぁ、ケンヤになんやちゅーもしてへんのかお子様やな!ってゆわれてムキになってん。せやけど、ちゅーってなんかもわからへんかったし、それでマツリに聞いてみよと思って」
御園「そうだったの」
金ちゃんは素直過ぎるとこがあるから人の言葉も間に受けやすい
遠山「せやけど…マツリが困って嫌やゆうならもう聞かへん」
御園「金ちゃん」
遠山「なん?」
猫のように丸い瞳をこちらに向けてくる金ちゃんの唇にうっすらと唇を重ねる
御園「これがちゅー」
ひと気のないタイミングを見計らったとはいえ、人前で我ながら大胆だとは思う。大きな目を見開いたまま、顔を赤らめて固まる金ちゃんの頭を優しく撫でる
御園「ほんとはね、そんなに簡単にするものじゃないし、人前でするものでもないんだけど…今日は特別」
遠山「おん…」
それじゃあ行こうかと、立ち上がる私の上着の裾を金ちゃんが掴む
御園「金ちゃん?」
遠山「なぁ、もっかいちゅーして?さっきのはあんまりにびっくりしてもうてよう分からんかった」
御園「人の話聞いてた?」
遠山「せやけど、今日は特別なんやろ?」
駄目なん…?と上目遣いで、見つめてくる。その顔は反則だ、そんな顔されたら駄目とは言えなくなる
御園「もう一回だけだよ?」
そう言ってかがみ込むとゆっくりと顔を近づけた
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あとがき
モアプリの金ちゃんエンドのちゅーネタの発露ってこんな感じかなと妄想した結果
普段は個人的に残念なイケメン感ある白石くんですが、モアプリでもぎゅっサバでも金ちゃんルートの白石はやたらと男前過ぎるなぁと思ったので出来心から出してみました
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