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庭球ゲーム
Shadow face(仁王)
夕方のミーティングを終え、管理小屋に戻る途中で幸村に呼び止められた

幸村「羽海野さん、少し話がしたいんだけどいいかな?」
羽海野「いいよ、何?」
幸村「ここじゃなんだから…ついて来てくれるかい?」

誘われるままに幸村の後をついて行くと、ひと気のない合宿所の外れの方まで連れ出される。まだ、夏でだいぶ陽が高いとはいえ、木が鬱蒼と生い茂ったこの辺りは影が色濃く落ちていて薄暗い

羽海野「で、一体何の用なんだよ。幸村」

ふと、この前のことがよぎって一瞬身構えたが、幸村は訳もなくああいうことをする奴じゃないし、自分も今日は何か悪ノリをした覚えはないので警戒を解くと幸村がずいっとのぞき込む様に視界をさえぎり、手首を掴む。そして、捕まれた手首ごとそのまま木へと軽く押しつけられた。幸村…?!と焦りかけた瞬間、ふっとあることに気づく

幸村「いきなりこんなことしてごめん」
羽海野「…」
幸村「びっくりしただろう?だけど、どうしても気持ちが抑えきれなくて…だって、俺は君のことが…」
羽海野「よくできた変装だな、仁王」
仁王「ありゃ。なんじゃ、バレとったんか」

地声で語りかけながら体を離すと、頭をかいてぴよっ、と呟く

仁王「幸村本人ですら騙しおおせたイリュージョンじゃっちゅうのによう見破ったの。やはり、愛の力っちゅうやつかな」
羽海野「なんだそりゃ。ま、あたしも途中まではマジで幸村だと思いこんでたけどさ」
仁王「ほう…それでよく分かったの」
羽海野「匂いだよ。幸村の使ってるシャンプー、ちょっと変わったやつなんだろ?結構印象に残る匂いだからさ。それでもって、こんな真似できんのはアンタしかいないだろう?」
仁王「なるほど。しかし、匂いとは盲点じゃったな。やはり、完璧に真似るならその辺も視野に入れて…」
羽海野「で、なんでこんなことしたんだよ?」
仁王「なんでって…ちょっとからかってみた
だけじゃし。あと、俺が神の子になりすましきれるかどうか、幸村と仲のいい奴で実験して確かめてみようと思ってな」
羽海野「実験するだけならここまですることないだろ?それに悪ふざけにしちゃ随分とタチが悪いよな」
仁王「じゃあ、本当はお前さんのことが好きだから、からかいたくなった…っちゅうのは?」
羽海野「思い切り嘘じゃんか」

ほんとのとこ、どうなんだよ?と、真意が読みきれないのもあっていつになく真剣な口ぶりになってしまう

仁王「お前さんは案外鋭いの。…すまん、ちょっとした八つ当たりじゃ、何か妙にムシャクシャしての」
羽海野「八つ当たりって…あ、もしかしてひわと真田のことか?アンタ、ひわと仲良いいみたいだし」
仁王「全く…よく勘の働くのぅ」

その一言で推測が確信に変わる

羽海野「なるほど、だから仲よさげにしてるあたしらが癪に触ったってワケ。クールな詐欺師の仁王くんにしちゃ、随分と大人げないことするじゃない」
仁王「だから、すまんかったよ」

心底すまなそうに謝るその口振りがまんざら嘘とも思えなくて、何だか拍子抜けしてしまう

羽海野「仁王ってひわのこと好きなの?」
仁王「わからん」
羽海野「今さら隠すことないだろ」
仁王「いや…本当にわからんのよ、自分でも自分の気持ちが」

真田に妬く程度には思い入れしとるのは自覚しちょるんじゃが…と自嘲気味に呟く

仁王「今までこんな風になったことがなかったからな、正直混乱しとる」
羽海野「それってさぁ、ひわのこと本気で好きってことなんじゃないの?今まで仁王が本気で誰かを好きになったことがなかったから、その感覚が分からないってだけじゃない?」
仁王「だから、あんまりズバズバ言いなさんな」
羽海野「いきなり受けなくてもいいとばっちり受けたんだ、これぐらい言わせてもらってもいいと思うけど?」

そういうと困ったように笑んで仁王が見つめてくる。幸村の顔でそんな顔をされるとまるで自分がいけないみたいでどうもバツが悪い

羽海野「ま、好きとか惚れた自体はアンタの事情だからさ。ただ、もうこういう真似はよしてよ…心臓に悪いから」
仁王「わかっちょるよ」
羽海野「こんなことしたの、今回だけは幸村には黙っててやるよ。貸し一つね」

そう言って仁王の合間をすり抜けるとひらひらと手を振る。その場から立ち去りかけてぴたりと足を止めるとくるりと後ろを振り向く

羽海野「アンタが覚悟決めたら、応援ぐらいはしてやるから」

早く男らしく腹くくれよと言い残すと、余計なお世話じゃと仁王がため息のように呟いた

ーーーーーー
あとがき

大人な仁王くんの大人げない話を書いてみました
カテゴリを海山どちらに振ろうか悩んだんですがヒロインが海なのでこっちに
ミニドラマを聞いていて本人が間違える変装って完成度ヤバすぎてルパ○だろ!!と、ツッコミを入れたくなり(笑)
でも幸村の顔が二つ並んだら俺得だなぁと想像してニヤけたのは言うまでもなく

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あきゅろす。
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