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09,初めての日

 なんとか今日も総長君から逃げて、家に帰る途中。
 突然だが、光り輝くと書いて光輝。なんともかっこいい名前だと思わない? 青髪君のパパとママを見てみたい。
 谷川光輝。【moon】の副総長である。

「しつこいんだよ!」

「ああ? 調子に乗ってんじゃねえ!」

 只今喧嘩真っ最中である。元気だね。

「一対多数、ナメてんの?」

「はあ? うっせーよ!」

 フェアじゃない。青髪君を取り囲むのはざっと見て二十人ぐらいか。
 助けなくちゃダメかなー。でも絶対、余計なことするなって怒られるだろうな。プライド高そうだしね。
 ということで、状況を見守ることにした。だって帰るにしても道が塞がれていて通れない。それにおもしろそう。そういえば青髪君が喧嘩しているところ見たことない。お手並み拝見って感じ?
 次々に襲いかかってくるそいつ等を、いとも簡単に蹴散らす青髪君。副総長だけあって強い。欠伸してる。その余裕が仇となったりするんだけどね。
 青髪君の後ろにいたやつが、鉄パイプを振り上げる。青髪君はそれに反応するが、一瞬だけ反応が遅れた。

「―っ!」

「やっと静かになりやがった」

 どっちかっていうと、五月蝿かったのはお前らだろ。とか軽く突っ込んでいるうちに、青髪君は袋叩き。抵抗するにしても上から押さえつけられていて、何もできない。歯を食いしばって、声は出さない。目も瞑らず、やつ等を睨む。

「はっ、ざまーみやがれ」

 声が聞こえた方に目を向ける。そこには昨日、青髪君を口説いて見事失敗し、一撃で沈められたやつがいた。このリンチを仕掛けたのは、聞くまでもなくコイツだろう。何もしないで高みの見物か。
 気に入らない。

「青髪君」

 青髪君に声をかけてみる。遠いし、聞こえないかと思っていたけど、こちらに気づいた。目は、余計なことするなと言っている。
 そんな目されたら、つい手を出したくなってしまう。

「ま、ホンチャンのこともあるしね」

 ちなみに本田のことね。借りは早めに返さないといけない。

「体で返してよ」

 あれから誰かに借りを作るのが嫌になった。冗談だと思っていたら、本気だったから吃驚した。別役は嘘吐きの癖に、嘘吐きじゃない。

「私の勇士をその目に焼きつけなよ」

 私はわざと地面を踏み鳴らす。リンチ野郎どめはこちらに向く。青髪君は顔が引き攣っている。何やってんだよお前、と聞こえてきたような気がした。
 喧嘩なんて、チームから抜けた時以来一度もない。久しぶりの感覚。こんなにも体は喧嘩を欲していたんだな。今ならこの町潰せるかも。

「ああ? なんだテメエは!」

 と近づいてきたやつに廻し蹴りを一つ。見事に決まった。うん、気持いい。
 ああ、青髪君、明日から私を尊敬しなさい、なんて。私は笑う。

「雑魚」

 久しぶりの気持ちよさをありがとう、谷川光輝。




あきゅろす。
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