「シグレ!」
「こっちくんな!」
只今、ストーカーこと総長君につきまとわれている。そういえばお前の携帯番号しらねー、ということで教えろ教えろうるさい。
「ケー番」
「はあ」
教えてもいいのだが、毎日のように電話がかかっていそうだ。
「おい」
「なに」
「今犯されるのと」
「どうぞ」
私はすぐさま携帯を差し出した。総長君はやった、と無邪気に番号登録している。なんだか前より雰囲気がやわらかくなった気がする。喧嘩になると般若になるけれど。
「アンタが総長?」
全国制覇といっても、最近の若いやつ叩いてみる? という感じで、チーム潰しをしていた私たち。それを聞いて、全国から集まってくるチームの皆様。こちらから出向く必要がなく、楽だった。
その中でも変わったチームというのが、総長君率いる【moon】で、私たちと同様出来たばかりの寄せ集めのチーム。年齢も私たちとさほど変わらない集団。
総長君は、当時から赤髪、そしてピアス。身長も今ほどはなかったが、高いほう。総長君は、前総長を叩き潰して総長になったらしい。高浜情報。
平和主義。自分たちのテリトリーさえ守れることができれば、それでいいというチームが、まさか私たちに喧嘩を売ってくるとは以外だった。
「タイマンはろーぜ」
おいおい、本当に同い年? ナンバーズと張り合えるほど強かったし、オーラも他のやつ等と全然ちがうかった。いつもはヘラヘラしているそいつは、喧嘩を始めると別人に変わる。なにより、あの目が不思議と綺麗だった。
気に入った。
振り降ろした金属バットを総長君の顔面、すぐ目の前で寸止め。総長君は物凄く驚いていたし、メンバーズも驚いていた。私、病院送りにするのが好きだったから。
「てめえな!」
そんな私に怒る総長君。屈辱的だよね、こういうの。お情けかけられてそこに生きるってのは、辛くて苦しいから。
それを知ってやってんだ。
「夜に月、いいんじゃねえ?」
「‥‥」
「俺らのところにつきな」
こちらから勧誘するのは初めてだった。いつもはあちら側から入れてくれとやってくる。そんな私を鼻で笑う総長君。地に伏していながらも、やはりその目は光を失っていない。
「誰が【night】の傘下に入るかよ」
「ふーん」
「ただ」
「あん?」
「アンタにならついていくぜ?」
そんなわけで、仲良くなっちゃったわけよ。
「メール送ったぜ」
登録し終わったのか、私に携帯を返してくる総長君。画面を見ると、メールがきている。受信ボックスを開いて中を見る。知らないアドレスからのメール。
私はそれを総長君で登録する。
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