[携帯モード] [URL送信]
07,事情

「シグレ!」

「こっちくんな!」

 只今、ストーカーこと総長君につきまとわれている。そういえばお前の携帯番号しらねー、ということで教えろ教えろうるさい。

「ケー番」

「はあ」

 教えてもいいのだが、毎日のように電話がかかっていそうだ。

「おい」

「なに」

「今犯されるのと」

「どうぞ」

 私はすぐさま携帯を差し出した。総長君はやった、と無邪気に番号登録している。なんだか前より雰囲気がやわらかくなった気がする。喧嘩になると般若になるけれど。

「アンタが総長?」

 全国制覇といっても、最近の若いやつ叩いてみる? という感じで、チーム潰しをしていた私たち。それを聞いて、全国から集まってくるチームの皆様。こちらから出向く必要がなく、楽だった。
 その中でも変わったチームというのが、総長君率いる【moon】で、私たちと同様出来たばかりの寄せ集めのチーム。年齢も私たちとさほど変わらない集団。
 総長君は、当時から赤髪、そしてピアス。身長も今ほどはなかったが、高いほう。総長君は、前総長を叩き潰して総長になったらしい。高浜情報。
 平和主義。自分たちのテリトリーさえ守れることができれば、それでいいというチームが、まさか私たちに喧嘩を売ってくるとは以外だった。

「タイマンはろーぜ」

 おいおい、本当に同い年? ナンバーズと張り合えるほど強かったし、オーラも他のやつ等と全然ちがうかった。いつもはヘラヘラしているそいつは、喧嘩を始めると別人に変わる。なにより、あの目が不思議と綺麗だった。
 気に入った。
 振り降ろした金属バットを総長君の顔面、すぐ目の前で寸止め。総長君は物凄く驚いていたし、メンバーズも驚いていた。私、病院送りにするのが好きだったから。

「てめえな!」

 そんな私に怒る総長君。屈辱的だよね、こういうの。お情けかけられてそこに生きるってのは、辛くて苦しいから。
 それを知ってやってんだ。

「夜に月、いいんじゃねえ?」

「‥‥」

「俺らのところにつきな」

 こちらから勧誘するのは初めてだった。いつもはあちら側から入れてくれとやってくる。そんな私を鼻で笑う総長君。地に伏していながらも、やはりその目は光を失っていない。

「誰が【night】の傘下に入るかよ」

「ふーん」

「ただ」

「あん?」

「アンタにならついていくぜ?」

 そんなわけで、仲良くなっちゃったわけよ。

「メール送ったぜ」

 登録し終わったのか、私に携帯を返してくる総長君。画面を見ると、メールがきている。受信ボックスを開いて中を見る。知らないアドレスからのメール。
 私はそれを総長君で登録する。




第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!