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06,卒業

「悪かったって」

 門から出ようとする私についてくる総長君。

「お前なんかもう知らない」

「‥‥照れんな」

 どこをどう取れば私が照れているように見えるのかな? そろそろお脳の病院が必要かな?

「あ!」

 急に大きな声を出すので、吃驚して総長君のほうに振り返ってしまった。
 ほらよくドラマであるのが、後ろに振り向いた瞬間に恋人がキスしてくるなんても青春しているシーンがあるよね。そんなのいらない。

「んー!」

 必死で総長君を引き離そうとするが、なかなか離れない。それにもたついていると、調子に乗った総長君が、舌を入れてくる。
 噛み切ってしまえ。

「いってえ!」

「死ね」

「愛情の裏返し?」

 誰かどうにかしてくれ。
 私は総長君と無理やりさよならをして、家に帰る道を進む。いつの間にこんなことになってしまったのか。何かをしたわけでもないし、毎日セクハラを受ける理由がわからない。

「なんスか、先輩」

「ちょっと遊んでくんね?」

 はい、帰宅途中青髪君発見。どうやら絡まれている様子。見た感じからしてヤンキーの男に口説かれている。男女問わずモテるんだね。羨ましい限りだよ。

「谷川、この前」

「あれきり一回だって言ったじゃん」

 一回手出してるのかよ。

「お前な!」

「うるせえ! しつこい男は嫌いなんだよ!」

 下から上への一直線の蹴りは、男の顎に直撃。綺麗に決まった。

「あ? シグレじゃん」

 ただ見ていた私に気づいた青髪君は、こちらに歩み寄ってくる。男はというと、完璧にノビきっていて、そこに倒れている。お気の毒に。通りすがりの人たちが、哀れみの目で見ている。

「あれ一応先輩」

 男を指差して説明してくれる。

「暇だったから一回遊んだんだよね。そしたら毎日のように連絡してくるんだよあのやろう。で、今日も誘われてこうなった」

 男女のもつれってやつ? いや、男男のもつれ? どっちにしてもどうなんだろうか。

「やんなるよね」

 なら止めろよ、とも言えずにただ話を聞いていた。

「男も女も変わらないな、優しくしたらすぐ調子に乗りやがる。最初に体目的って言ってんのに、前提がどうのこうの意味わかんねっつの。恋だの愛だの、くだらねーんだよ。黙って抱かれとけばいいんだ」

 これ、高校生の会話じゃない。

「そう思わねえ?」

 思わない。そんな経験ないんで。

「そういえば、シグレの初めては?」

「え、あ、ない」

「はあ?」

 信じられないといいような顔をする青髪君。いや、お前と一緒にすんな。これでも純情乙女なんだよね。自分で思って、ひいた。

「ま、総長に食われちまうだろうね」

 なにその不吉な予言。

「がんばりなよ、あの人激しいから」

 忠告ありがとうよ。精々食われないように頑張るさ。

「‥‥ナンバーズの誰かとヤってると思ったんだけどな」

 なにその意味分からない予想。

「なんでナンバーズ?」

「はあ? お前一回死ねよ。」

 なにその死ね発言。私のハートにぐさりと刺さったぞ。

「気づかねーの? 松川とかお前に惚れてるじゃん」

「ないない」

 なんで他人の気持がわかるの。それに松川はなんていうか‥‥兄弟みたいな?ま、恋愛とか興味なさそうだし。他のやつ等も、私で遊んで楽しんでたし。特に別役とか別役とか鬼頭とか別役とか別役。

「松川かわいそー」

「なんで?」

「‥‥もういい」

 青髪君は大きな溜め息を一つ。あれ、なんか変なこと言ったかな?

「シグレって、家ここらへん?」

「まあ」

「ふーん。総長に夜這いされないようにね」

 不吉な言葉を残して、笑顔で去っていく青髪君。
 いったいなんだったんだろう。




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