高浜と家でのんびりしていると、何故か松川と千種が来た。二人とも、なんで高浜がここにいるんだと言う顔をしていた。
それから四人でお茶を飲んで和んでいると、高浜がこんなことを言い出した。
「そうだ。せっかくだから皆でご飯食べに行こうよ」
「…」
「えー、めんどい」
松川は反応せずにお茶を飲んでいて、千種はここから動く気がまったくないようである。
「もちろん俺の奢りだよ」
「いくいく」
すぐさま千種がそう答える。現金なやつ。松川は相変わらず無反応。
「マッツンも行くよね」
「ああ」
それだけ言って、またお茶を飲んでいた。
全員がお茶を飲み終えて、向かった先はファミリーレストラン。日が落ちかけのこの時間、子連れのお客が多い。
私たちは店員に、一番奥の席の禁煙席に案内される。私は奥側に座って、隣には松川、正面には高浜、斜め前に千種。千種はこの並びに納得していないようである。
呼び出しボタンを押して店員を呼び、皆それぞれに注文する。全員ドリンクバーをつけて、どれだけ長居するつもりだよ、とか思いながら真っ先にドリンクバーを頼んだのは私。
「何飲むんだ」
「んー、体にいいやつで」
松川がついでにと言う感じで、私の飲み物も持ってきてくれるらしい。
「あ、俺も」
ここですかさず反応する千種。松川は露骨に嫌な顔をして断る、かと思いきやそのまま無言でドリンクバーのところへ。
ありえない反応に私と千種は顔を見合わせて、高浜はなんだか楽しそうにしていた。
「ほらよ」
それから、松川は私と千種に飲み物が入ったガラスコップを渡してくれる。
「ありがと」
「…」
「何混ぜたの?」
高浜が大爆笑しながら聞いている。
「いろいろ」
松川は無表情にそう答える。
千種の前にあるガラスコップには、何と何を混ぜたらそうなるのかと思うぐらいドス黒い液体が入っている。見ようによってはコーヒーに見える…かもしれない。
千種も千種でチャレンジャーなのか、それとも新たに飲み物を取りに行くのが面倒なのか、もしくは馬鹿か。その液体にストローを挿して一口飲む。
「…」
なんともいえない表情をしていた。千種以外の三人が笑った。
「…マツカワ」
「…なんだ」
「塩いれただろ」
「…いろいろとな」
それから頼んだ料理が次々と来た。。黒い液体はウエイトレスのお姉さんにプレゼントすることにした。
松川は静かにドリアを食べていて、千種は一つ食べ終わるとまた新たな料理が出てくると言った状況。高浜は、私に学校の話をしてくれる。
「男子校で全寮制なんだ。それでね、別役が生徒会長なんだ。」
生徒会長を引き受けた別役に驚きだ。あいつなら確実に力でねじ伏せるだろう。
「でね、最近は…というかもともとなんだけど、性犯罪が多くて、その処理が大変なんだ」
「性犯罪って…痴女でも入ってくるの?」
「ううん、違う。男が男を襲うんだ。」
「へ、へ〜」
笑顔でそんなこと言わないでほしいな、高浜くん。
それから食べ終わった千種も加わりいろいろな話を聞いたりしていた。気づけば外は真っ暗。いったい何時間いたのだろうか、私たちはファミレスを出ることにした。
会計中の高浜を外で待つ。
「腹いっぱい」
「チーチャンいっぱい食べてたもんね」
「食いすぎ」
「…マツカワは食べなさすぎ」
「まあまあ。あ、タッチャン」
会計が済んだのか、高浜が外に出てきた。
「ごちそうさま」
「いいえ」
それから家に帰ることにした。
「送っていく」
という三人に、私は素直に甘えることにした。
右からは怒鳴り声、左からは泣き声、下を見れば倒れている人、上を向けばきれいな夜空。ここはとても不思議な町だと思った。
「ちっ」
松川の舌打ちが聞こえて前を見ると、ガラの悪いお兄さんたちが行く道を塞いでいた。
「ハロー、若者たち」
真ん中にいるリーダーだと思われる男が、それだけ言って手に持っていた金属バットで襲い掛かってくる。私はそれを軽く避けるが、すぐさま違う男が私を狙って殴りかかってくる。
なんで私。
なんだか避けるのも面倒になって、動きを停止する。殴りたきゃ殴れば?
その拳が私にヒットすることは無く、千種の長い足が男の顔面に直撃する。それは容赦ない蹴りで、食らった男は地面でのた打ち回っている。
私はそれを、冷たく見下ろした。
「ふふ、死ぬ?」
最後には高浜がリーダー格の男にナイフを突きつけて笑顔でそう言った。これがまた怖い。
「話と違うじゃねーか!」
男はそれだけ言って逃げていった。
「…シグレ、お前何かしたのか?」
「さあ?」
松川さん、そんな呆れた顔をされてもまったく身に覚えが無いんだよね。
そしてやはりというべきかこの三人、喧嘩をしている時がとても楽しそうだ。
全員で顔を見合わせて笑った。
|