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クオミク


「ミクオ、その、これ…」


窓の縁に座って空を眺めていたミクオに声をかけた。
あまりにも真剣な顔で空を見ていたから声をかけるのを一度誤ったけど、彼にどうしても渡さなきゃいけないものがあったから。


「?…それ、もしかしてチョコ?」


緊張して喋ることが出来ずこくんと頷く。



「味は…ネギ味?」

「チョコ要らない?」

「あああ、嘘嘘」


冗談に脅すと子犬みたいに慌てるから可愛い。


「ありがとな」

「どういたしまして」

「俺的にはミクが全身にチョコ塗って「私を食べて?」とか言ってくれるのかと」

「や、やるわけないでしょっ!!!」


突然の発言に耳まで真っ赤にする。
な、何言ってんの。ミクオの中の私はそんな…

想像したら余計に顔に熱を持ってしまい、ぶんぶんと首を左右に振ってごまかした。

ミクオはそんな私を見て呆然としていたが、窓の縁から降りて真っ直ぐ私を見つめた。
その瞳が真剣で私はその瞳の中に吸い込まれて何もすることが出来ない。


「それじゃ代わりに髪をいただく」

「…髪?」

「そ、」

「髪なんか食べても美味しくないよ?」

「ミクの匂いがする」


私の髪を少し持ち上げてミクオは自分の鼻へ近づけた。


「…なんか変だよ」

「ミクが可愛いからだよ」


そう言ってミクオは私の髪にキスを落とす。
全く予想の出来ない行為に顔を赤くすることしか出来ない。


そしてただ、ひとつ思うのが



「(…髪じゃなくて)」



唇にしてくれないのかな?


「(…って何考えてんの!!)」


小さな想像をして現実に戻った。
そんなこと、ないよねと苦笑した途端、何かが唇に触れた。










「これでいいんだろ?」


目の前にはミクオの顔が近くにあって、怪しげな笑みをしていた。
それを見て瞬時にわかった。




私はミクオにキスされたんだと。








「あれ、ミク顔赤いよ?」

「あ、あんたのせいだからねっ!?」

「ミクが望んでたからしてあげたんだよ?」

「わ、私はそんなこと――」














望んでた
















「………」

「ミク?」

「…そーだよ、望んだよバカッ!!」


走って逃げようとしたのに


「行っちゃダメだよ。ミクのその顔、他の奴に見せたくない」


腕を引っ張られてミクオの胸に引き寄せられた。ミクオの胸に耳を当てると心臓の音が僅かに、早い。
それを聞いて安心した。




このままずっと、抱きしめていてほしい、と心から思った。


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