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5題
1.隣同士がいちばん自然
リビングの中央にあるソファにリンと二人で座っていた。
特に何もすることはなくただ座っていた。






「………」


座り始めてどれくらい経っただろう。会話もせずにいるから流石に沈黙が続くと気まずい。
隣を見るとリンは膝を抱えて何処かを真っ直ぐ見つめている。



「リン」

「……何?」

「あ、いや…何でもない」


話しかけてもこっちを見ようともしない。リンに触れたいけどリンの素っ気ない返事に心が悲しくなってきた。




「…くっついていい?」

「…はい?」

「だからその…もっと傍にいっていい?」

「い、いいけど…」


突然そう言ってリンは俺の隣…真横に移動する。そして俺に体を預けてきた。


「え、あのリンさん…?」

「……ダメ?」

「ダメじゃない。全然いい」


触れたかったのにリンから触れてくれてる。むしろ嬉しい。


「正直、隣じゃなくて膝に座ってほしい」

「やだ。…だってリン重いもん」

「リンなら何人乗っても大丈夫」

「それ、褒め言葉?……でもリンはこの方がいい」

「なんで?」

「レンが隣に居るから」

「俺はいつでもリンの隣に居るよ」

「……いーの!今は隣がいい!」


拗ねたように頬をぷうっと膨らませた。
「やれやれ」と言葉を吐くと、また会話が途絶え静寂した部屋が広がった。


でも今は違う。ただ寂しいだけじゃない。
だってすぐ傍に彼女が居るから。
たった数センチ距離があっただけなのにすごく寂しく感じた。

けど今は数センチも数ミリも距離がない。
一枚の布越しに温もりを感じる程近くに居る。


「…リン?」


やはり会話がないと耐えられない。リンの名前を呼ぶと、耳元からすーすーと寝息が聞こえた。



「…寝てんのか」


寝ていることを確認し、投げ出されているリンの手を握った。


さっきまでの寂しい部屋はいつの間にか幸せな部屋に変わっていた。










隣同士がいちばん自然

こんなにも、君を感じれるから


あきゅろす。
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