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第十六話‐壱
時は夕暮れ時。
犬夜叉に急かされ家族との時間を惜しみつつも現代からここ、戦国時代の過去へと戻って来たかごめ。だが、仲間との再開もままならないまま、突如として現れた豹猫族に攫われてしまった。そして連れて来られたのは、とある城。どうやら豹猫族が根城にしているようだった。

そこには、巨大なミイラが不気味にそびえ立っていた。



「きゃっ!」


連れて来られ、早々に牢にぶち込まれたかごめ。冬嵐は牢の扉を閉めると、そこで大人しくしときなと言い放ち、背を向けた。


「ちょっと!」


ドンドンと檻を叩き抗議するも、相手は全く聞く耳持たずだ。


「(あいつら…“豹猫族"って言ってたけど……)」


最初に現れた時、豹猫族は四魂のかけらを持つかごめに用があると言った。何の為に四魂のかけらを狙っているのかは判らないが、必ず犬夜叉が助けに来てくれるとかごめは信じていた。


「(それまであたしも頑張らないと…!)――っ!?」


視線を感じ、背後の気配に気づいたかごめは勢いよく振り返る。薄暗い牢の中では姿がよく判断できず、身構えた。だが、灯りの元に晒されたその正体を見てかごめは、え?と肩の力を抜いた。


「お前さんも猫共に捕まっちまったのか?」


そこにいたのは、農民だろうか、粗末な格好をした大勢の人々であった。皆、一様にして涙ぐみ、手を合わせこの先の行く末を天に祈っていた。


「……もしかしてあなた達、豹猫族に捕まっちゃったの?」
「もう俺達ゃおしまいだ…!あいつらに食われちまうんだ!」


ここの城下町に住んでいた人々は、突然現れた豹猫族に住処を奪われた挙げ句、全員捕らわれてしまったのだ。

嘆き悲しむ人々にかごめは眉を下げる。すると、今まで暗くて分からなかったが、よく目を凝らして見ればそこに見覚えのある人物が横たわっている事に気づいた。かごめは恐る恐る近寄ると顔を覗いた。


「(やっぱりだ……)――猫芽ちゃん、猫芽ちゃん!」
「ん、くっ…!」


頬をやんわりと叩き、起こすと、一度眉を寄せてから薄らと目を開いた猫芽に取り敢えず安心した。


「…お前確か……犬夜叉の…」
「よかった、気が付いたのね」
「つ、いてて。…あれ、ここ…」
「ここは豹猫族っていう妖怪の住処よ」
『………っ豹猫族!!』


寝ぼけ眼だった猫芽はハッと我に返ると勢いよく体を起こした。


「うっわどうしよ……とんでもない事になったぞ…」
「えっと、猫芽ちゃん?」


どうしようどうしようと頭を抱える猫芽。かごめは戸惑いつつも、彼女が何故ここにいるのかを尋ねた。


「どうして猫芽ちゃんがここにいるの?あ、もしかして同じ猫妖怪だからかしら。だったらお願い!あいつらにあたし達を解放してくれるよう頼んでくれない?」
「あたしら忍(スイ)猫族をあんなチンケな豹猫族と一緒にすんな!」
「ご、ごめん」


猫芽の剣幕にかごめは戸惑い思わずたじろいだ。


「おい!今“猫妖怪"って言ったか!? そいつ妖怪なのか!?」
「ひいっ!! 食われる!!」
「だ、大丈夫だって!確かに猫芽ちゃんは妖怪だけど人間は食べないわ!!…多分」
「やっぱり食うんだぁ!!」


猫芽が妖怪、しかも猫妖怪だと知った村人達は悲鳴を上げる。落ち着いてと焦るかごめに対し、猫芽は構わず先日の一件を思い出し憎憎しげに舌打ちをした。


「まずいな…(“契約"の事は忍猫族しか知り得ないのに、何故あいつらが知ってる…!?)――あ゙あぁあ!!誰だ余計な事吹き込んだのはぁ!!」
「妖怪が暴れ出したー!!」
「食われるー!!」

「ちょっと皆落ち着いてよ!」


思わず“おすわり"と口に出てしまいそうになり、かごめは肩を落としてうなだれた。


「――ん?そういえばお前、何でこんな所にいるんだ?」
「ハァ……なんかあいつらに捕まっちゃったのよ。四魂のかけらがどうとか」


先程自分がした質問を返され思わず溜め息をつきながら訳を話す。それにへぇ、と頷いた猫芽。
かごめがここにいると言うことは犬夜叉が連れ戻しに来るのだろう。殺生丸もここには必ず来る。猫芽が捕まっていようがいまいが必ず。
という事は、あの腹違い兄弟はここで鉢合わせになると言うことだ。


「あいつ怒るだろうな…」
「何が?」


猫芽の呟きに首を傾げるかごめを一瞥すると、何かを一考し、口を開いた。


「東国の豹猫族は昔、その勢力を殺生丸と犬夜叉の親父が治める西国まで伸ばしてきたんだ。それで、その親父が追っ払ったわけ」
「ふーん」
「だけどまあ猫っつーのは――あたしが言うのもなんだけど、執念深い。で、五十年前また攻めてきた」


猫芽は遠くを見つめながらあの時の事を思い出していた。


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あきゅろす。
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