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第十五話‐参
「あんたのその口の悪さとせっかちさは、どうやら母親譲りではないようだね」
「っ…黙れ……!!」
「おやおや、もしかしてあんたの一族を殺った事、まだ根に持ってんのかい?」
「…ちっ。お互い様だろーが、執念深いのは」


豹猫族と忍猫族には因縁があった。その昔、豹猫族の総大将が猫芽の母に、我が一族の配下になれと強要してきたのだが、母はそれを即答で拒否した。それに腹を立てた豹猫族が忍猫族の者を殺したのだ。


「……猫芽、お前は下がっていろ」
「…………」
「その様子だと、まだ殺生丸の飼い犬やってるみたいだね。どうだ、こっちに来て猫妖怪同士仲良くやらないかい?」
「やなこった」


こちらも即答で拒否してやると冬嵐は肩を竦めた。そして意味ありげに猫芽を見つめ、口角を上げる。


「…決めた。やっぱりあんたは連れて行く」
「……は? 何言って、」
「なぁに、“契約”をすればこっちのもんさね」


冬嵐のその言葉に大きく目を見開いた。


「…!!? なんであんたがそれを知ってる………!!」


大きくうろたえる猫芽にただ含み笑いをする。殺生丸は横目で猫芽を見ながら、契約…? と呟く。


「おや、あんた知らないのかい? 益々こっちが有利ってもんだ、ふふふ」
「……説明しろ猫芽」
「………!!!」






「――いいか? これは我が忍猫族特有のものであり、弱点でもある。だから契約する時が来たら、本当に命を預けられるかどうか、自分で見極めなさい――」





「……あたしは……っ」


くっ、と言葉を飲み込んだ猫芽。
殺生丸と猫芽の注意が冬嵐から逸れたのを彼女は見逃さなかった。


「!!? しまっ…!!」


素早く間合いを詰められ、氷柱の様な物で頬を斬られてしまった。そして冬嵐は猫芽に顔を近づけ“何か”をした瞬間、ぷつりと切れた様に猫芽の意識がなくなった。


「…!?」
「殺生丸、こいつは貰ってくよ。色々役に立ちそうだしね」


肩に猫芽を担いだ冬嵐。


「…貴様、何をした」
「ふーん、あの殺生丸も女には弱いのか。あんたには餌は必要ないだろうが、この子を返して欲しかったらあたしらの所に来な。…いらないんだったら別に構いやしないけど」
「………」


殺生丸が攻撃しようとするも、冬嵐の能力で凍った川が盛り上がり行く手を阻むと、冬嵐は消えて元の平穏な谷間に戻ったのだった。


「――殺生丸様ー!」


後方を見ると、魚を沢山持ったりんと阿吽を引っ張る邪見がこちらに走って来ている。


「殺生丸様、ほらっお魚!猫芽様がほとんど捕ってくれたの! ね!猫芽様、…あれ?」
「邪見」
「ハァハァ、はは、ハァ」
「豹猫族が現れた」
「えぇ!? あ、あ奴らがまた…!! あ、だから猫芽がさっき…」


邪見は川で魚捕りをしてる最中、突然どこかに走って行った猫芽を思い出す。


「…ん? 殺生丸様、猫芽めが確かこちらに来たと思われるのですが…、何処へ?」
「………豹猫族に捕われた」
「あー捕われた。なるほど…って捕われたーー!!?」
「――りん。阿吽とここで待っていろ」
「猫芽様も戻って来るよね?」
「………。行くぞ邪見」
「お、おおお待ちよ殺生丸様ぁ!!」


去って行く二つの背中を見ながら、猫芽の事が気掛かりになり表情が暗くなるが、殺生丸を信じ、大きく手を振る。


「“みんな”で迎えに来てねー! きっとだよーー!」




かくして、豹猫族との戦いが始まったのだった。




第十五話―終



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あきゅろす。
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