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第十五話‐弐
翌朝、りんと邪見は川で魚を捕まえようとしていた。


「わあ!邪見様しっかりねっ」
「はいよ!」


一生懸命魚を追い掛ける二人の傍ら、殺生丸は木に背を預け座り、阿吽は伏せて楽にしている。猫芽は阿吽に寄り掛かり、二人をなっていないとばかりに見ていた。


「こら猫芽!お前もせんか!」
「あたしは水に濡れるのがやだ〜」
「…!…ふっ、そんな事言って取れる自信もないのじゃろうに」
「はぁ? ちょっとあんたあたしを誰だと思ってんの?」
「(簡単な奴め)」


ほくそ笑む邪見に気づかず、猫芽は腕まくりをして威勢よく川に入った。


「それっ!」
「わあ凄い!」


猫芽は目にも留まらぬ速さで魚を捕まえ始めた。

猫芽はもう、考えるのはよそうと切り替えていた。


「――っぶ!猫芽!!水がこっちにかかって、ぶほっ!」
「あはははは!」
「邪見様びしょびしょだ!」
「りんも余裕こいてると」
「きゃー! やったな〜!!」


笑い合う三人を目に写していた殺生丸は、何かに気づき立ち上がると、川沿いに歩き出した。


暫く歩いていると、川が見る見る凍りつき空気が冷たくなった。


「……冬嵐か…」


凍った川の上を歩いて来たのは、豹猫四姉弟の一番上の猫妖怪、冬嵐だった。


「久しぶりだねぇ、殺生丸」
「まだ生きていたか」
「ご挨拶じゃないか。ふふ、今度こそ決着を着けようと思ってね」
「決着などとうに着いている。やると言うのなら、…今度は五十年前の様にはいかぬぞ」
「相変わらず、無粋な奴だね。だけど五十年前の様にはいかないってのは、こっちもそうさ。…お館様が、あんたを待ってるよ」
「お館様?」


お館様というのは冬嵐達の総大将らしい。それが漸く蘇ると冬嵐は言う。


「蘇って…どうする?」
「また東の土地に攻め入るのさ。そして…、復讐だろうね。あんたらに…」
「ならば…今度こそ息の根を止めてやろう」
「嬉しいねぇ! 受けて立ってくれるっていうのは」


刀に手をかけた殺生丸に、冬嵐はその動きを止めると言葉を付け足した。


「おぉっと。こちらには切り札がある事を、知って貰いたいねぇ」
「…切り札だと?」


殺生丸の問いに答え様と口を開きかけた刹那、冬嵐がいた場所が突如水しぶきを上げた。



「……あんたが気づかない筈ないと、わかってたよ」
「――ふん。誰かと思えば、五十年前尻尾巻いて逃げ出した奴じゃねーか」


寸で避けた冬嵐が笑みを深くする。猫芽は川に突き立てた拳を納めると、憎しみの篭った目で冬嵐を睨んだ。


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