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第十五話‐壱
「ここなぁに?」
「竜骨精という大妖怪が封じられていた場所だ。…いやしかし……、こうも跡形もなく粉砕するとは…」


一行が訪れた場所には、確かに封印されていた筈の竜骨精が消えていた。邪見は殺生丸に本当に犬夜叉がやったのか聞く。


「何をやったかまでは、わからんがな」


その言葉に邪見はまだ疑い気味だ。
猫芽はりんと乗っていた阿吽から下りると、竜骨精がいた場所をじっと見上げる。
猫芽の一族は、竜骨精との戦いで命を落としていた。


「(……母様達もあの“クソ親父”を守るだけで必死だったってのに……)」






「――…猫芽、母様達は行ってくる。殺生丸様の言う事をちゃんと聞くんだよ」
「………」
「…お前が一人残る理由が分かるか?」
「……あたしが力不足だから」
「違う。…お前は――――」






「猫芽様!」


手を引っ張られ意識が戻る。見ると、りんが自分の手を引っ張っていた。その向こうでは邪見が早くしろと喚き、阿吽は鼻を鳴らしていて、あの殺生丸でさえ止まっていた。


「……今行く」


猫芽は悔しさを押さえ込む様に、りんの手を握り返した。



――その夜パチパチと焚火の火が燃える中、皆は寝静まっていた。殺生丸と猫芽を除いて。
りんと邪見(いつの間にか)は猫芽の膝に頭を乗せよく眠っている。


「(………あの母様が命を落とした相手を…、あの犬夜叉があっさり倒したって事なのか…?)」


先程から猫芽はずっとこの事をぐるぐると考えていた。知らず、歯を食いしばっていた。


「(………母様はいつも言っていたな…。“あの人の為に死ねるなら本望”だと…)」



父様には逃げられたとか何とか言ってたけど、…母様性格きつかったしな…。あれが敬慕なのか愛慕なのか、一目瞭然だったけど。
猫芽は目を閉じ、遠い母の思い出を瞼の裏に思い描きながら、頬が緩むのを感じた。


だがその時猫芽に電撃のようなものが走った。


「!」


顔を上げ辺りを注意深く見渡す猫芽に、後ろにいた殺生丸が何事かと猫芽を見遣った。


「……どうした」
「…………なんも」


素っ気なく答え、勘違いかと自己解決した猫芽は浅い眠りへとついたのだった。







「―――それで?」
「四魂のかけらは、変な巫女が持ってるらしいんだけど留守だった。それに余計な奴らが邪魔してくれるんだ。ついて来てくれないか?」
「言っておやり、春嵐」
「うん、いいよ」
「姉貴の方はどうなんだ?」
「居場所はわかったからね、これから会いにやってやるさ」
「本当に一人でいいのか?」
「任せときな。それにあっちには私達の“同胞”もいる事だし。お前は夏嵐に手を貸しておやり」


四姉弟は不敵に笑い合うと、それぞれの目的へと歩き出した。


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