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第十四話‐壱
猫芽は考えていた。


「あのさぁ邪見。殺生丸って一体何食べてんの?」
「なんじゃいきなり」
「だってなんか食べてる所見た事あるか? 随分一緒にいるけどあたしは見た事ない。りんもそう思うだろ?」
「うん。あたしがご飯あげた時、人間の食べ物は食べないとか言ってた」
「じゃあ何かは食べてるって事だろ。……もしかしてこっそり夜な夜な小妖怪食べてたりして…」
「きゃー!」
「殺生丸様がそんな小妖怪なんぞ食べるわけなかろう!!」
「だったら邪見様聞いてきて?」
「へ」
「お、それはいいね。聞いてきて?」


最初は嫌がっていた邪見だったが、女子二人にきらきらとした目でお願いされては動かざるをおえなかった。



「…せ、殺生丸様」
「なんだ」
「あの〜…殺生丸様は一体何をお食べになっているのかとお聞きしたくて…」
「………私が何を食べているか、だと…?」
「ひぃ!! 申し訳ございません!あの二人がどうしても聞いてこいと言うものですから!」

「あー!人のせいにすんのかよ!邪見も知りたいって思ってたくせにー」
「くせにー」

「だっ黙れ黙れ!」


猫芽とりんは面白がって邪見をからかう。それを横目で見遣る殺生丸。


「結局わからないままだねー」
「あ、本当だ。邪見ー」
「わしのせいか!」
「――そうだ。猫芽様が何かあげてみれば?」
「え゙」
「それだけわしに申すのであれば、できるじゃろう?」
「ほらっ、いつもりんにくれてるやつ! あれ美味しいから殺生丸様もきっと食べてくれるよ?」
「って言ってもあれは忍者食みたいな物だからなー。第一あたしにそんな勇気ない」
「お願い!」


渋っていた猫芽だったが、可愛い妹(みたいな)の頼みとなれば同じく動かざるをおえない。



「……せっ殺生丸…」
「…なんだ」
「いいい今お腹空いてる?」
「………腹など減ってはおらぬ」
「だ…だよねー…」


くるりと体の向きを変えたが、その先で邪見とりんの目がそれを許さなかった。


「(う…)……あ、あのさぁ……」
「……なんだ」
「これ…」


猫芽が差し出したのは、りんからしたらなんだかわからない物。邪見にはわかる様なので妖怪の食べ物だろう。とりあえず串にさして干した肉の様な物だった。


「…別にあんたの為にやってるわけじゃないけど、いらないなら、」


手から抜き取られた感覚。顔を逸らしていた猫芽はハッと殺生丸を向いた。手に取った殺生丸は差し出された物を暫く見つめ、やがて一口食べた。


「やっ……やったー!食べた!! 見ろ邪見!あたしの勝ちだ!」
「負けた〜!!」
「さすが猫芽様!」


猫芽は揚々として邪見達の元に戻る。今までの三人での会話は殺生丸に丸聞こえだという事に気づいていない。

にこにこと笑う猫芽とりんに、涙を呑む邪見。色々な表情の中で殺生丸は無表情で貰った物を食していたのだった。


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