『ほざいてろデブ猫』
「なっ! んだとぉこの!もういっぺん言ってみろ!!」
『デーブデーブ』
「っお前頭領の娘だからって調子乗んなよな!!」
「「そーだそーだ!」」
そういう男勢に対し、猫芽率いる女勢は牙を向く。
「何よ!猫芽ちゃんに勝てない癖に!!」
ふん、と互いにそっぽを向く。
「どうせお前なんて頭領から秘密の技とか持ってんだろ。ずっりーの」
『! あぁ?んだとこら。修業も怠けてる奴に言われたくねぇよ!』
また取っ組み合いが始まり、最終的に全員ボロボロになって各々の家に帰って行った。
「……くだらん」
そう吐き捨てた殺生丸は、一人森の中に向かう猫芽に気づき、興味本位でつける事にした。
―猫芽をつけている途中、突然猫芽から苦無がこちらに飛んできた。
『誰あんた。さっきから着いてきてキモい』
殺生丸は少し青筋を浮かべつつ、猫芽の前に姿を現した。
「貴様は忍猫族首領の娘らしいが、誠か?」
『自分から名乗れ』
「貴様などに名乗る名などない」
『じゃああたしも何も言わない』
ふいと横を向く猫芽に苛立ちを抑えつつため息をついた。
「子供だな」
『っあんただって同じぐらいだろ!!』
「一緒にするな」
『五月蝿い殺すぞ!!』
「貴様如きに私を殺せるとでも?」
『いちいち嫌みな奴だな!あんた友達いないだろ』
「………」
てっきり、そんな物必要ないとか言うと思った猫芽は拍子抜けした。
『…変な奴』
「お前に言われたくない」
猫芽は舌打ちを打つと、忌ま忌ましげに殺生丸を指差した。
『あんたのその髪。嫌い』
「なに?」
『あたしの嫌いな奴とそっくりだから。あいつは母様を取った』
ぶっきらぼうにそう言う猫芽の表情は、どこか寂しげだった。
「…お前……」
「―――猫芽」
『あ、母様!』
猫芽は表情をころりと変え、呼ばれた方に走って行った。一方殺生丸も猫芽とは逆から呼ばれ振り向く。
「話は終わられたか」
「なんだ、迎えに来てくれたのか?」
「……ふん」
殺生丸は一度猫芽が去った方をじっと見つめ、やがて父と共に森を去って行った。
『―――。―い!殺生丸!』
意識が現在に戻り、気づくと猫芽が怪訝にこちらを見ていた。
『何だよぼーっとして』
「……………」
『な、なに』
じとりと見られ、後ずさる。
「…お前の口の悪さは昔からか……」
『は?』
殺生丸はそう呟くと着物を翻し歩き始めた。
「せっ殺生丸様お待ち下さい!」
『何だあいつ』
そしてまた旅が始まる。
第十三話
《殺生丸の些細な思い出》
*****
猫芽は昔過ぎて覚えてません。
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