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第十三話‐壱
「――猫芽様って、“こいびと”とかいるの?」


いきなり聞かれた一言に、川で顔を洗っていた猫芽は、思い切り顔を川に突っ込んだ。


「……い、いないけど…。何で?」
「気になったから!」


にこにこと答えるりんに曖昧に頷きながら、手ぬぐいで顔を拭いた。邪見は阿吽に餌をやっており、殺生丸はどこかを見ている。


「じゃあ猫芽様はいつから殺生丸様達と一緒にいるの?」
「えー、いつからだっけ。とりあえず100年以上はいるかな」

「ひえー!そんなに!?」


りんは驚いた後、ふと考える。


「(……じゃあ猫芽様達って一体いくつなんだろう…)」
「んー!あたしも歳取ったなー」


ぐぐぐと背伸びをして年寄りくさく呟く猫芽は、はたと気づいた。


「…そういやちっさい頃……」
「え?」
「なんでもないよ」


殺生丸はそんな猫芽達を横目で一瞥すると、またどこかを見だした。


「…………………」




――遠い昔、殺生丸はとある森の中を歩いていた。


「……この先に最近父上が同盟とやらを組んだ一族の村があるのか…」


そう呟いて足を進める。


「…結界も張っていないとは…無用心な一族、」


言いかけた時、両側から苦無を宛てがわれた。


「何者」
「…死にたいのか?貴様ら」
「……もしや頭領の…」


詫びを静かに告げ二人の猫又は消えた。


「…流石は妖忍衆をも越える忍一族、か」


一方先程消えた二人の女は、気配を消し殺生丸の頭上でこそこそと話をしていた。


「…あの“闘牙王”とやらの息子か…」
「ああ、頭領が熱心になった、」
「たわけ。頭領に聞かれたら死ぬぞ」
「…認めないからな、あの人も」



――森の中腹に差し掛かった頃、村が見え始め殺生丸は木に身を隠しながら様子を見る。見た所、普通の妖怪一族にしか見えず、あの泣く子も黙る忍猫族とは結び付かない。

敵に回すと厄介極まりないが、味方につければ天下統一に近づくとされる一族。だが、今の首領になってから味方につけるのが難しくなったそうだ。何でも好き嫌いが激しいらしい。


「…父上はどのようにして手玉に取ったのか…」


その時、子供の騒ぎ声が聞こえてきた。


「――いけー!」
「おいどうした!おせおせ!」


見ると数人が輪を作り、その中心でガタイのいい少年と、誰かが取っ組み合っていた。そしてその少年は倒されてしまった。


「くそーっ!」
「お前女に負けるなんて情けないぞ!」
「うっせーよ!」


その子供は自分を見下ろす者を睨む。


「次は負けないからな!――猫芽!!」
「…ふんっ」


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