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第十話‐弐




『………』


しん、と静まるその場。

猫芽は何か考える様にりんを見つめた。


『……よし、来いりん。いい所に連れてってやるよ』

「え?」


戸惑うりんを余所に猫芽は化け猫になり、りんを背中に乗せた。

そしてしっかり掴まっとく様にとりんを振り返り、空へと飛び立ってしまった。


「なっ猫芽!!どこへ行く!!……ってもう行っちゃった…。はぁ…殺生丸様、よいのですか?」

「……好きにさせればよい」

「好きにって……(あー何かようわからなくなってきたわい…。まぁ“可愛い子には旅をさせよ”と言うし………って殺生丸様がまさかそんな事思ってる訳あるまい!!…いや、でももしかして……いやいやまさか…)」
















――忍猫族(すいねこぞく)。

とは、猫芽が属する一族だ。今は犬夜叉の父と竜骨精の戦いにおいて、猫芽以外の一族は死滅してしまっている。


もともと忍猫族は、その名の通り忍の一族で、頼まれれば何でもやる一族であった。頭領は猫芽の母である。


だが、遠い昔、犬夜叉の父と“盟約”を交わし犬夜叉の父に仕える様になったのだった。






「――わあ…!」


猫芽から降り、その場を見たりんは感動の声をあげた。


猫芽は人間の姿に戻ると、その場を見下ろした。


『…ここはあたしの住んでた村だよ』

「え?猫芽様の?」

『そ。今はだーれも住んでないけどね。だから、家もそのままに花畑にしちゃった』


二人の眼下に広がるのは、色とりどりの見事な花畑だった。


『ここはあたししか知らない。殺生丸も邪見もだ。りんは特別』


その言葉にりんは目を輝かせた。


『…あたしも家族が死んだ。だけど妖怪なんて無駄に生きなきゃいけない。だったら楽しく生きなきゃ勿体ないだろ?』

「…うん」

『まあこれはある人が言ってたんだけどね』

「ある人?」

『これは内緒だ』


歯を見せ笑った猫芽。りんは首を傾げながらも、再び花畑を目に映した。


「また連れてってくれる?」

『もちろん』

「じゃあ指切り!」

『指切り?』


小指を立てにっこり笑うりんに習い、不思議そうにしながらしゃがんで小指を立てた。


「ゆびきりげんまんうそついたらはりせんぼんのーます」

『針千本!?(それ一種の脅迫じゃないか…?)』




冷や汗を流しながらも猫芽は、りんと仲を深めたのだった。




第十話
《家族を失った少女達》



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あきゅろす。
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