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第九話‐弐




“風の傷”が殺生丸に襲い掛かる。殺生丸が唸り声をあげた時、脈動の音が天生牙から鳴った。








“風の傷”が治まった跡の地面は深々と切り裂けていた。

その中、猫芽は呆然としていた。


『うっそ……負けた…?殺生丸が…?』


猫芽は静かにその場を阿吽に乗り離れた。





――森の中を歩き回る猫芽。阿吽は邪見の所に行かせた。


『……多分死んではいないと思うけど…』


すると、微かに獣の声が聞こえその方向に向かった。


歩いて行くと、白い塊が見えた。


『!……よかった……………なんて思ってないし…!!』


こそっと木の陰から見ると、桃色の着物を着た少女がいた。


『(人間…?)』


訝しげに見ていると、その少女は竹の筒を置いて去って行った。


「…………猫芽」


においでわかったのか、殺生丸が呼ぶ。猫芽は素直に出て来た。


『誰だよさっきの』

「知らぬ。それより邪見を呼んでこい」


猫芽は何か考える様に頭をかくと、殺生丸が寄り掛かっている木の反対側に腰掛けた。


『めんどくさいからここにいる。あんたが治るの待っとく』

「………」


殺生丸は何も言わず、休憩の体制に入った。

そして無言のまま、陽が沈んだ。





――ガサガサ


『!』


その夜、またあの少女が現れた。その手には、葉に乗った焼き魚や茸があった。それを少女が竹の筒の側に置こうとすると、


「余計な事をするな。人間の食い物は口に合わん」

『(えー、食べないのかよ。旨そうな魚なのに…)』


“猫”妖怪だからか、魚に目が食いついている猫芽。

すると少女は食べ物を置くと、魚を取りよたよたと歩きながら猫芽の正面に来て、魚を差し出した。


『……あたしにくれるの?』


こくんと頷く少女。


『………ありがと』


受け取り、頭をポンと撫でると少女は驚いた様に目を丸くし、やがて笑顔になった。


『?』


お礼を言っただけなのに、と首を傾げながらも魚にかぶりついた。少女は笑顔のまま去って行った。


「………欲に忠実な奴だ」

『う!五月蝿い!!お前は速く傷を治せよ!』


魚を片手に殺生丸の横に立って怒鳴る。殺生丸はそんな猫芽を見上げるとそのまま見つめだした。


『ぅ!!』


何の意図があってそうするのかわからず、慌てて後ろを向いた。


『あーもうやってらんねー!やっぱ邪見呼んでくる!!』


そのまま歩き出した猫芽だが、急に倒れた。訳がわからず足を見ると、足首に絡まる鞭の様なもの。


『おまっ何すんだよ!』

「面倒だと言ったのは貴様だろう」


殺生丸は光の鞭を消すと、目で戻れと命ずる。

猫芽は腹を立てながらも元の位置に戻った。


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あきゅろす。
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