“風の傷”が殺生丸に襲い掛かる。殺生丸が唸り声をあげた時、脈動の音が天生牙から鳴った。
“風の傷”が治まった跡の地面は深々と切り裂けていた。
その中、猫芽は呆然としていた。
『うっそ……負けた…?殺生丸が…?』
猫芽は静かにその場を阿吽に乗り離れた。
――森の中を歩き回る猫芽。阿吽は邪見の所に行かせた。
『……多分死んではいないと思うけど…』
すると、微かに獣の声が聞こえその方向に向かった。
歩いて行くと、白い塊が見えた。
『!……よかった……………なんて思ってないし…!!』
こそっと木の陰から見ると、桃色の着物を着た少女がいた。
『(人間…?)』
訝しげに見ていると、その少女は竹の筒を置いて去って行った。
「…………猫芽」
においでわかったのか、殺生丸が呼ぶ。猫芽は素直に出て来た。
『誰だよさっきの』
「知らぬ。それより邪見を呼んでこい」
猫芽は何か考える様に頭をかくと、殺生丸が寄り掛かっている木の反対側に腰掛けた。
『めんどくさいからここにいる。あんたが治るの待っとく』
「………」
殺生丸は何も言わず、休憩の体制に入った。
そして無言のまま、陽が沈んだ。
――ガサガサ
『!』
その夜、またあの少女が現れた。その手には、葉に乗った焼き魚や茸があった。それを少女が竹の筒の側に置こうとすると、
「余計な事をするな。人間の食い物は口に合わん」
『(えー、食べないのかよ。旨そうな魚なのに…)』
“猫”妖怪だからか、魚に目が食いついている猫芽。
すると少女は食べ物を置くと、魚を取りよたよたと歩きながら猫芽の正面に来て、魚を差し出した。
『……あたしにくれるの?』
こくんと頷く少女。
『………ありがと』
受け取り、頭をポンと撫でると少女は驚いた様に目を丸くし、やがて笑顔になった。
『?』
お礼を言っただけなのに、と首を傾げながらも魚にかぶりついた。少女は笑顔のまま去って行った。
「………欲に忠実な奴だ」
『う!五月蝿い!!お前は速く傷を治せよ!』
魚を片手に殺生丸の横に立って怒鳴る。殺生丸はそんな猫芽を見上げるとそのまま見つめだした。
『ぅ!!』
何の意図があってそうするのかわからず、慌てて後ろを向いた。
『あーもうやってらんねー!やっぱ邪見呼んでくる!!』
そのまま歩き出した猫芽だが、急に倒れた。訳がわからず足を見ると、足首に絡まる鞭の様なもの。
『おまっ何すんだよ!』
「面倒だと言ったのは貴様だろう」
殺生丸は光の鞭を消すと、目で戻れと命ずる。
猫芽は腹を立てながらも元の位置に戻った。
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