「―――すごーい!おじいさん強いんじゃない!」
「全く、わざわざ殺生丸より弱い犬夜叉に、身を守って貰わなくてもよいのでは…」
「おい今何ってった!!」
一行は今、浮遊できる妖怪に乗り空を飛んでいる。
犬夜叉は弥勒に噛み付くと、ぐわっと反対側を向いた。
「だいたいなぁ!何でてめぇがいんだよ!!」
そこには阿吽に乗った猫芽が平然と犬夜叉達に並んでいた。
『五月蝿いなぁ。男が一々そんなちっさい事気にしてんじゃねぇよ』
「はっ!!そんな事言って殺生丸に置いてかれたんだろ!」
『ああもういいよそれで。あー餓鬼はぎゃあぎゃあ五月蝿くて敵わないわ』
「んだとこら!!歳なんてそんな変わんないだろぉが!!」
『はぁ!?てめぇと一緒にすんじゃねぇよ!こちとらてめぇより数倍生きてんだよ!!』
「んじゃあてめぇはババアだ!!」
『ああ!?こらてめぇ今すぐ消してやろうか!?弱いくせに生意気なんだよ!!』
「よわっ…第一お前は四魂のかけらを早く返しやがれ!!」
「犬夜叉!!あんたちょっと五月蝿いわよ!!」
かごめに怒られ、不満そうに顔を歪める。
「なんで俺だけ!!」
「おじいさん、気になってるんだけど…」
かごめはそれを流し、“天生牙”の事を聞く。
「そりゃあ凄い力と言えば力なんだが、犬の大将に頼まれた時その効力にわしも少し首を傾げはしたんじゃ……」
「――斬れねぇ刀?」
夕方。一同は川辺に腰を据えて、夕食を刀々斎が火を吹いて焼いていた。
「そんな刀で一体どうやって戦うんだ?」
「“天生牙は敵と戦う刀にあらず”。ま、言うならば“癒しの刀”じゃ」
「癒し?」
「強き者を薙ぎ払う鉄砕牙に対して、天生牙は弱き者の命を繋ぐ刀」
「命を繋ぐ…」
「真に人を想い慈しむ心あらば、天生牙の一振りで100名の命を救うも可能!」
「慈しむ心…」
刀々斎の説明に、だからあれだけ鉄砕牙を欲しがっていたんだ、と納得した。
『慈しむ心なんて、この先天地がひっくり返る事があっても無理だな』
少し離れた所で阿吽に背を預け座っていた猫芽は鼻で笑う。
かごめはそんな猫芽を横目で見ながら、声をかけた。
「猫芽ちゃん、だったよね…?」
『なに』
「わ、私、日暮かごめ!よろしくね!」
『…は?』
まさか自己紹介なんてされるとは思わなかった猫芽は、呆気に取られた。
「おいかごめ!敵によろしくっつってどうすんだよ!」
「だってしっかり自己紹介とかしてなかったし、あと前助けてくれたもん」
『…はは!面白い女!』
かごめの言葉に、賛同する様に前に出た珊瑚。
「それもそうだね。あたしは珊瑚。こいつは雲母だ。あんたも猫又みたいなもんだろ?」
仲良くしてやってくれと言う珊瑚。それと同時に雲母が猫芽の膝に乗り、一鳴きした。
「私は弥勒と申します」
「七宝じゃ!」
笑顔で言う皆に、少し目を丸くした猫芽は雲母を撫でながら、少し笑った。
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