『おいおいこれ跡残ってんじゃん』
河に自分を写しながら顔を歪ませる。
あたしらは今川辺で足を休ませていた。
邪見は人頭杖を磨き、この痛々しい跡を着けた張本人は済ました顔で木に腰欠け、遠くを見ている。
『あー、ひま』
「暇ならば犬夜叉を殺す算段を少しは考えんか」
『怠い』
「はぁー」
邪見は珍しく言い返さず深くため息をついた。張り合いがない。
何か面白い事はないもんかと、辺りを見渡すと緑の生い茂った森を見つけた。
『ちょっと森に行く』
「森?」
『ひまつぶし。どうせ暫くここにいるだろ?』
「はぁー」
邪見のため息を肯定として受け取り、森に向かって歩き出した。
その時、殺生丸の野郎がちらりとこちらを見たがまた遠くを見出した。
そんな遠くを見ても鉄砕牙なんて手に入んねーよ。と心の中で悪態をつきながら、森へと向かった。
――思った通り、ひまつぶしができた。
生い茂った森には大体妖怪がうじゃうじゃと住み着いている。
おまけにあたしは四塊のかけらを所持しているから、あっちから寄ってくる。
『四塊のかけら…面白そうだから持ってたけど、大正解』
にんまり笑って、そいつらの相手をしてやる。
最近、全然戦闘とかしてないから爽快爽快。
大体さぁ、わざわざ犬夜叉殺してまで鉄砕牙を手に入れなくてもいいと思うんだけどなー。
十分強いんだし。
………………ん?
『………いやいや強いとか全然思ってねーし!』
誰に言うでもなく、頭を振る。
第一、あんな自己中で傍若無人で愛想の“あ”の字もない様な奴が、てめーの親父みたいになれるかってんだ。
あの人は、偉大で賢く誰でも護れる様な優しい……
『ってそんな事全然思ってないし!』
あーもう!!どいつもこいつも犬なんてろくな奴はいない。
半妖はキャンキャン煩いし、ナルシストはすかした野郎だし。
『――…あれ?』
とかなんとか思っていたら、目の先に見慣れた銀髪が見えた。
『殺生丸…?何やってんだあいつ…』
訝しげに見ていると、そいつは更に奥へと歩き出した。特に理由はないが、気配を断ちついて行く。
妖怪共もあたしに怖じけづいたのか、寄ってこなくなったし。
このあと、軽い気持ちでついて行ったのをあたしはかなり後悔するのだった。
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