目覚めよ… 「―――で!―く、――さい!!」 とぎれとぎれに聞こえてくる誰かの声に、うっすらと目を開いた。 周りに指示を出す自分の主治医がぼんやりと映る。すると、その男と目が合った。 「!……ったく…どんなやんちゃしたらこうなるんすか?」 「……し…ら、ん…」 そこでまた、ふつりと意識が途切れた。 「――……」 何か夢を見ていた気がする。 「体調はどうっすか」 主治医の声。 「……っ…。ど、がつく程最悪だ」 掠れた声を出す李野は、意識がはっきりした途端痛みを認識し、顔を歪める。 「まァ当たり前っすね。ぶった切られた体で川、浮遊してたんすから。どんだけデンジャラスな水浴びしてんすか?」 「……そういう気分だった」 「どーいう気分!?」 男はため息を吐くと、体温計を李野の口にぶっ刺した。 「ふぐっ!?」 「奉行所に感謝するんすね。こちらに連絡が入った時はもう驚きましたよ。“なんかまりもがたゆたってるゥゥゥ!!”ってね。辻斬りにでもやられましたァ?」 「………」 黙る李野を見遣り体温計を抜く。それを見、李野にも見せた。 「何度に見えます?」 「………8度5分……どーりで」 「運ばれてきた時は、40度近くありました」 「…それは昨日の話か…?」 「そうですが」 先程から少し刺々しい気がする。特に目線が。 「ほんと死ぬ直前もいい所っすよ。馬鹿ですかあなたは」 「………」 「大出血に高熱、おまけに大暴れして心臓にも異常。被害者だとしても、あなたにも非があります」 確かに辻斬りを誘い込んだのは自分だ。言い返す言葉もない。 「……すまなかった…」 「まったく……私の睡眠時間返して下さいよ!!」 「ほんっっと一回死んでくんないかなぁ」 今度は李野が盛大なため息をつくと、少し周りを見渡す。 「拙者の服は?」 「………まさかとは思いますが、抜け出そうなんて事…」 「何言ってる。あれは拙者のお気にで、世界に何着とないレア物なんだ。それにものっそい怠いんでそんな気起こりません、はい」 「………」 ハァ痛い痛い、と体を摩る李野を疑わしげに見る男。 「とりあえず安静にしといて下さい。動いたら死にますから」 と言って出て行ったのを見て、そろそろと起き上がる。 「――あ、それと」 「〜〜〜っ!!」 「警察の方々が来てるんで、事情聴取ちゃんとして下さいよ」 「…わ、わかった…」 今度こそ出て行った男の足音まで聞き、起き上がった。そして窓を開ける。 「……雨か…」 外は生憎の天気だった。 「――……ハハハハ……すんません、事情聴取はまた後ほどお願いします」 もぬけの殻の病室を見て、青筋を浮かべ引き攣った顔をする主治医だった。 [前へ][次へ] [戻る] |