内なる怒り
夜も更けた頃、新八とエリザベスは路地で辻斬りを待ち伏せていた。
「でもやっぱり無茶じゃないっすかねぇ、辻斬りに直接桂さんの事聞くなんて。まだ犯人が辻斬りって決まった訳じゃないし…」
すると突然新八にエリザベスが刀を振り上げた。
「何するんですかァ!!ちょっとォォ!!」
「“俺の後に立つな”」
「うるさいよ!どっちが前か後かわからん体してる癖に!!」
「――おい」
「「!?/“!!”」」
突然後から声をかけられ、バッと振り向くも奉行所の人間でホッと息をついた。
「びっくりしたじゃないよォ、何やってんだって聞いてんの」
「“貴様に言う必要はない!”」
「お前ら、わかってんの?最近ここらにはなァ……」
ドサッ
その音に新八が振り返ると、血を噴き出すさっきの男の下半身が。
「…辻斬りが出るから危ないよォ…」
「!!?」
驚く間もなくエリザベスが新八を遠くへ蹴り飛ばした。新八の目の前にはエリザベスに刀を振り上げる辻斬り。
「エリザベスゥゥゥ!!」
似蔵が口角を上げ振り下ろそうとした瞬間、自分の刀とごみ箱の蓋が吹っ飛んだ。
「……おいおい…妖刀探してこんなところまで来てみりゃ、どっかで見た面じゃねェか」
ごみ箱の中から出て来た銀時を見て驚きの表情を浮かべる新八。
「ほんとだ。どこかで嗅いだ匂いだねェ」
似蔵が網笠を外すとその顔があらわになり、新八がその名を驚いた様に叫ぶ。
「件の辻斬りはあんたの仕業だったのか!それに銀さんも何でここに…」
「目的は違えど、あいつに用があるのは一緒らしいよォ?新八君」
似蔵は嬉々として飛ばされた刀を抜く。
「嬉しいねェ、わざわざ俺に会いに来てくれたって訳だ。こいつは災いを呼ぶ妖刀と聞いていたがね、やはり強者を引き寄せるらしい。桂に水野にあんた、こうも会いたい奴に合わせてくれるとは俺にとっては吉兆を呼ぶ刀かもしれん」
「桂さん!?それに水野ってまさかっ、李野さん!?二人をどーしたんだお前!!」
「おやおやおたくらの知り合いだったのかィ。それはすまん事をした、俺もおにゅーの刀を手に入れてはしゃいでたものでねェ。ついつい斬っちまった」
「あいつらがてめェみてェなただの人殺しに負ける訳ねェだろ…!」
「怒るなよ、悪かったと言っている。あ、そうだ」
「!!」
「ほーら、せめて奴の形見だけでも返すよ」
似蔵が取り出した一房の髪を見て驚愕の表情を浮かべる新八。
「記念にとむしり取ってきたんだが、あんたらが持ってた方が奴も喜ぶだろう。ああ、水野の方は仕留める前に逃げられちゃってねェ…だがあの体たらくで川に飛び込んだんだ、生きちゃいねェさ。どうだ、証拠と言ってはこの左耳。奴の十八番なんだろう?あれには恐れ入…」
似蔵が言い終わらないうちに勢いよく銀時が斬りかかった。
「何度も同じ事言わせんじゃねェよ。あいつらはてめェみてェな雑魚にやられる様な奴らじゃねェんだよ…!!だいたい李野と鬼ごっこした事あんのかてめェは」
「ククッ、確かにあの速さには驚いたし、俺ならば敵うまいよ。だが奴らを斬ったのは、俺じゃない…」
何かを貫く様な音に銀時はそちらに目線を向け息を呑んだ。
「俺はちょいと体を貸しただけでね…なァ?紅桜よ」
「っこ…こいつは…!!」
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