後悔山の如し
「んん?息が上がっているみたいだが?」
「ハァ…ハァ……拙者も、いい年、なんでな。…そろそろ隠居したい、年頃、なんだよ!!」
息も絶え絶えの李野は体を伏せ、攻撃を避ける。
「避けてばかりじゃ張り合いがないねェ…」
似蔵の言う通りさっきから李野は一度も反撃をしていない。
「ハァ…ハァ……」
「いいっすか?三分でも走り回ったりしたら心臓止まる覚悟でいて下さい。あ、別に心臓が止まるって訳じゃなく、心臓止まる寸前…いやちょい前くらいの覚悟でお願いします」
「…チッ」
ここは一度退散した方が懸命かもしれん。いやしよう。だってあんなうねうねした物に勝てる自信ない。それにもう体が持たない。
よし逃げよう、と意気込んだ瞬間―。
ドクンッ!!
「うっ!」
胸に激しい痛みが走った。えぐる様な痛みに思わず胸を掻き合わせ動きを止めてしまった。
それを似蔵は見逃さなかった。
「どうやら今回は体調が悪かった様だねェ」
「!しま――」
ズシャア…
李野の肩から横腹に斜めにかけて血が噴き出した。
似蔵はニヤァ…と笑い、前に傾く李野に留めを刺そうと刀を振り上げる。が、
「!?」
似蔵の左耳が飛んでいた。
「……こりゃあ…」
李野はその隙をついて、痛む体を叱咤し、横の川へと飛び込んだ。
ザブーンッ
「(…水の中までは流石に追えまい…)」
川の流れに身を任せながら、内心ほくそ笑んだ。
…あれ?でもこの先どうしよう。
後先考えずの自殺行為に後悔し始めた頃、意識を飛ばした。
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