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ヅラはもはや本名


「――さて…」


ある程度情報を集めたが、もう夕暮れで辺りは暗い。




刀がまるで生き物みたいだった、刀身が淡い紅色を帯びていた、と。
辻斬りについては少し仕入れたが、桂についてはさっぱりだった。


「(……だが)」


李野は確かな確信を持って人通りの少ない道を進んで行く。


「(……“本人”に聞くのが手っ取り早い)」


そう思った時だった。




「女の一人歩きは危ないよォ。特に最近では辻斬りが出るしねェ」

「そうか。では家まで頼めるか?辻斬りに会っちゃ敵わん」


李野は驚きもせず振り返る。そこには、網笠を被りサングラスをかけた男が。


「すまないねェ。送れないが、ちょいと俺とやり合ってくれんかねェ」


そう言うや否や、男――岡田似蔵は得意の居合で斬りさるが李野は近くの民家の屋根にいた。


「まぁそう殺気立つな。その前に幾つか質問がある」

「………」


顔には出さないが、似蔵は李野のその速さに驚いていた。


「質問と言っても、主が晋助と関わっているのはわかっているっと」


また斬りかかってきた似蔵を避け、地面に降り立つ。
李野がいた民家はボロボロになっていて、軽く目を見張った。


「……人が話してる時に斬ったらダメって習わなかったか?」

「俺もあんたとやり合いたくてうずうずしてんのさ。どうやらこの刀は強者を引き寄せるらしい…」


うっとりと言う似蔵に対し、李野は眼光を尖らせる。


「桂にあんた……目が見えない俺には眩しい光が見えるのさ」

「!…という事はヅラ、通称桂小太郎にも関わっているな」

「おや、知り合いだったかィ?そしたらこれは…」

「!!」


似蔵が取り出した一房の髪を見て、李野は目を見開いた。


「………さぞかし今の頭は変になっているだろうな」

「生きていたらの話だったらねェ。まァその望みは薄いが…!!」


李野が勢いよく斬りかかったのを受け止める。


「…貴様のその残り少ない五感を潰してやろう」

「…へェ。流石“殺戮の悪魔”と言ったところかィ」


二人はギリギリと競り合い、バッとお互いに間合いを取る。


「…拙者の思った通りだ……拙者がいなかったら銀時の所にでも行くつもりだったのだろう」

「お見通しって訳かィ」

「言って置くが、拙者は速さではぴか一なんでな。そこんとこよろしく」

「ほォ……そしたら俺も本気、出さないとねェ…」

「!?なっ…!!?」


李野は自分の目を疑った。
似蔵の手から幾つもの触手の様な物が生え、刀へと絡み付き刀が以前より数倍太くなった。
その刀はドクドクと波打っている。


「……“生き物”とは良く言ったものだ…」


知らず冷や汗が流れる。と、さっきとは比べものにはならない速さで似蔵が斬りかかってきた。李野は受け止めるが、その重さに顔を歪める。

そのまま斬り合いへと入った。



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