珍客 その頃の万事屋では。 「お茶です」 エリザベスが来ていた。 新八は緊張した面持ちでお茶を置くと、速やかに銀時達が座るソファーの後ろに回った。 「あのォ…今日は何の用で…」 「………」 全く反応を見せないエリザベスに銀時は横を向き、小声で話す。 「何なんだよ、何しに来たんだよこの人。恐ェよ、黙ったままなんだけど。怒ってんの?何か怒ってんの?何か俺悪い事したァ!?」 「怒ってんですかアレ、笑ってんじゃないんですか」 「新八、お前のお茶が気に食わなかったネ。お客様はお茶派ではなく、コーヒー派だったアル。お茶くみだったらその辺見極めろヨ。だからお前は新一じゃなくて新八アルネ。何だよ、八って」 「んなもんぱっと見でわかる訳ないだろ!?」 「俺すぐピンときたぞ…見てみろ!お客様は口がコーヒー豆みたいだろうが。観察力が足りねェんだお前はァ」 それに新八が今度はコーヒーをエリザベスに出すが、全く反応なし。 「っちょっともうほんとにいい加減にしてくんない?何でじぶん家でこんな息苦しい思いをしなきゃならねェんだよ。あの目見てたら吸い込まれそうなんだけど」 銀時は大きくため息をはいた後、頭をガシガシとかく。 「だいたい李野はどこ行ったんだよ。あいつが一番話通じそうじゃねェかよ」 「どーいう意味ですかそれ。何か辻斬りがどーたらで、朝から出掛けてますよ」 「ったく」 と、ここで電話が鳴り響いた。それを聞いて銀時は口角を上げる。 銀時の思惑通り、依頼の電話だった様だ。 そして逃げる様に万事屋を出て行った銀時に、青筋を立てた新八と神楽はエリザベスに、銀時のいちごオレを机に出し(叩きつけ)た。 「いちごオレでございます」 それを見下ろしたエリザベス。 「エリザベス、武士は質素で素朴な物を食していれば良い。いちご牛乳だパフェだ、甘ったれた軟弱な物を食していたら、体だけじゃなく心まで堕落してしまうぞ。そして少しの物で満足するのも武士たるものだ」 すると、エリザベスの目から大粒の涙が流れ出す。 「泣いたァ!!やったァァ!!そんなに好きなのいちごオレ!?」 「ぐっじょぶアル新八!!よくやったネ!」 「あれ…やったのか、これ」 [前へ][次へ] [戻る] |