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初体験


その頃の李野。


「今暇だろ?どっか行こうぜェ?」
「「イェーイ!」」


今時、という風な若者三人組に絡まれていた。


「………」


李野は唖然としている。


「(……“男”…に絡まれてる…)」



……ぃよっしゃァァア!!って、あれ?これ喜んでいいの?



「な!行こう行こう!」
「待て。そもそも何で拙者が一人かと言うと、銀時と少しあって出て来た訳であって、だから暇だけどそこそこ暇じゃない訳であって。というかこういう絡みネタとか三人一組で出来ないのかって聞きたい。じゃ」
「じゃっ、じゃねェよ!!」
「何軽くあしらったぜ、みたいな顔してんの!?」
「三人はベタだからだよ!!」


「――俺の連れに何か様か?」


尚も言い合う四人に、第三者の声がかかる。その声に振り返ると、魚の被り物を被った桂が。


「………ごめんなさい」
「謝られた!!」
「虚しい!!助けたのに!!」
「元気出して!!魚くん!」
「魚くんじゃない、桂だ。…あ、今はジョーイ・カツーラだった……俺の連れに何か様か?」
「めげない!!」
「ごめんなさい死ね」
「何か語尾みたいになってるから!!」
「ごめん!!俺らが悪かったから話合わしてあげて!?見てるこっちが切ない!!」
「そーだ!俺らこれから合コンじゃん!!」


そう言って三人はどこかへと消えていった。


「まったく…こんな路地で一人で歩いてちゃいけないでしょ?」
「すまん…その格好で言われるとちょっと……。で、何だその風采は」
「ああこれはな。地球人差別の源になっている天人専門の料理屋がオープンし、攘夷過激派が店を襲おうとの噂があり、天人店員ジョーイ・カツーラに変装して無血で営業停止に追い込もうと模索する……どうなる…!?桂!!……という壮大なスケールで…」
「あ、だいたいわかったんでいいです」
「あ、そうですか」


攘夷活動…してたんだ…。としみじみ思う李野だった。


「それで、もう終わったのか?」
「ああ、まあな」
「そうか。じゃあそこまで歩こう。何か奢る」
「そうこなくてはな」


こうして二人は他愛のない話をしながら歩いていたのだが、二人して顔をしかめた。


「……何か焦げ臭いな…」
「…行ってみるか」


少し急ぎ足で向かうと、ある一軒家が大きな炎を上げて燃えていた。


「ほらほら下がって!!」


集まる野次馬を火を消しながら退かす火消し。


「…これは…」
「………」


燃え盛る家を見て、まだ消火活動が始まったばかりだと伺える。二人はただ見ているだけしかなかった。すると、


「駄目だ!!近づいちゃ!!」
「っ離して!!!」


その声に顔を動かすと一人の女が火消しに羽交い締めにされていた。


「中に子供がいるの!!お願いだからいかせて!!!」
「駄目だ!!」


その母親は泣きながら子供の名前を叫ぶ。


「………」
「…とても助けに行ける状態ではないな……気の毒だが…」


桂はそう呟き、隣の李野を横目で見ると泣き叫ぶ母親をじっと見ていた。

まさか…、と桂が思った時、李野が母親へとつかつか歩き出した。


「その子供は幾つでどこにいる」
「え…」
「早く」
「え、えっと…四つで多分居間に…」
「わかった」


戸惑う二人を置いて、火消しが持っていたバケツを奪い頭から水を被った。それに目を見開く桂。


「お、おい!まさか…李野!!」
「…すぐ戻る」


そう言って今だ燃え盛る家に飛び込んで行った。




その数秒後、家が大きく崩れた。


「っ李野!!!」




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