[携帯モード] [URL送信]
あいつ


「…愉快な奴らだな」
「――………それで、」
「ん?」
「銀時にはもう会ったのか?」
「………いや、まだだ」
「…そうか」
「一応探してはいるがな……もう会わないでおこうとも思っている」
「っ……だが、」
「実を言うとここにも来ないつもりだった」
「……」
「辰馬に拙者は生きていると伝えてくれ、と言ったのだが『わしゃ忙しい』と言われたからな」
「………あいつも一応頭であるからな」
「そうそう、辰馬にもこっぴどく怒られたな」
「…あいつにか?」
「ああ、罰として一週間辰馬の世話係をやらされた」
「あの馬鹿の世話なぞ、死んでもやりたくないな」
「拙者ももうやらん、あれは骨が折れる。陸奥殿の苦労が計り知れないよ」
「俺はお前の世話にも手を焼いたがな」
「……それを言うな…」


李野は苦笑いをした。


「…取り敢えず今日はここに泊まっていけ、丁重に持て成すぞ?」
「…ありがとう」
























夜も更けた頃、李野と桂は同じ部屋の布団に入った。


「こうやって布団並べて横になるのは久しぶりだな」
「戦争以来だからな」
「…………まだ攘夷活動をしているのか?」
「ああ、この国の夜明けを見ずにして俺も終われなんだ……どうだ?李野も一緒に」
「………拙者は自分の事で手一杯だな…」
「…そうか。まあ気が変わったら何時でも迎え入れるぞ」


その後も二人の会話は続く。


「そういえば、髪を切ったのだな。俺とお揃いだったのに」
「拙者はヅラではないが…」
「これは自毛だ。……って、いたた!!何故髪を引っ張る!」
「これは驚いた、本当に自毛だったか…」
「…えっ…!?何でそんなに残念そうな顔してるの!?やっぱ段々俺の扱い酷くなってない!?」
「Zzz…」
「寝てるゥゥ!!」


桂は小さく溜息をつき、横目でチラリと李野を見遣った。


「……明日は俺が銀時の所に連れていってやる」
「Zzz…」
「…言っておくが、逃げても無駄だぞ」
「Zzz…」
「引きずってでも連れていくからな」
「………拙者に会えば…銀時はあいつの事を思い出してしまう…」
「銀時がそんな女々しい訳ないだろ」
「……それに顔を合わせずらい…」
「だから引きずってでも連れていくと言っている」
「…えらく強引だな」
「お前の恋の悩みを相談された身にもなってみろ」
「っあれはお主が盗み聞きを…」
「もう寝ろ、おやすみ…」
「………」


李野は反論を諦め、目を閉じた。

























――皆が寝静まったその頃の銀時は、


「………水野李野…ねェ…」


俺の知ってる李野は、まりもみてェな頭で、お人よし。それにすぐ行き倒れる。あとムカつくくらい美少年顔。


「…だァー!!めっちゃ当て嵌まってるしィィィ!!!」


銀時が叫んだ瞬間、押し入れの扉が開いた。


「うるさいアル!!夜中に雄叫びあげて発情期アルか!!?」
「俺の発情期はとっくに過ぎてんだよコノヤロー」
「とにかく静かにするヨロシ!!」


バタンッ

「………ハァ…」


にしてもあいつとは喧嘩別れつーか何つーか……会ったら気まじーなァ………まあ生きてたらの話だけど。


「………李野か…」


戦争終わってから思い出す事もなくなってたな。


あいつの事も……。




Next

[前へ]

5/5ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!