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お見通し


高杉は怒鳴り握っていた手首に力を篭め、李野を睨む。

ぎりっと音がし、思わず顔をしかめるが負けじと李野も睨み返す。




「……それ以上喋るとてめェでも何するかわかんねェぞ」
「ふん、何とでも言え。今のお主なんか恐くありませーん」
「………」



やべっ、銀時の真似したら想像以上に煽ってしまった。自分でも腹立つ。



「……てめェ…この状況わかってんのか」


李野は以前押し倒されたままだが、誰よりも強気だ。


「壊して壊して、それで気を紛らわせて何が楽しい。拙者だったら三日で飽きるわ」
「……マジで犯すぞ…」
「本当は何かに縋り付きたくて堪らない癖おって」
「…あ"?」
「本当は誰かに頼りたい、本当は誰かと笑い合いたい、本当は泣きたくて堪らない」
「……何が言いてェ…」
「その癖一人で孤独の道を行こうとする。だから嫌いだ」
「!」
「人一倍淋しがり屋な人間が強がってるだけにしか拙者は見えん」
「………」


黙り込んだ高杉を見て、どうだ参ったかとばかりに勝ち誇った顔を見せる李野。


「………晋助がどの道を歩もうと晋助の勝手だがな、」
「………」
「はっきり言えるぞ、この道は間違ってると。そして今の晋助を拙者は見てはおれん」


さっきとは打って変わって真面目な表情で高杉を見る。

暫く二人は無言で見つめ合っていたが扉の外からドドドドと何かが走ってくる音がし、勢いよく扉が開いた。


「晋助様ァァ!?何事ッス…」


その女、来島また子は二人の様子を見て顔を真っ赤にさせた。


「し、し、失礼しましたッス!!まさかお取り込み中とは!!」
「おやまァ。突っ走りすぎなんですよ、猪女。」
「武市先輩は黙ってて下さい!!」


頭を下げる来島の後ろから覗き込む様にこちらを見た武市変平太。


「……何の用だ」
「いや、晋助様の声が聞こえたので何事かと…」
「…そうかい」
「まずどこうか晋助」


李野からの非難の声に渋々といった感じでどく。

李野は体を起こすと高杉と来島を交互に見た。


「気づいてるとか何とか抜かしときながら、お主には立派な人がいるではないか」
「あ?」
「んなっ!私はそんなんじゃ…!!でもやっぱそう見える?そう見えるかなぁ」
「全く見えませんね」
「黙れ変態ィィ!!」


ギャーギャーと騒ぐ様子を見てポカンとしたが、フッと笑った。



なんだ…ちゃんとした仲間がいるじゃないか。

まぁそれを言ってもこいつは否定するだろうがな。



「…悪かったな」
「何がだ」
「少々きつい事を言ってしまった」
「……別に」


ふいっと顔を逸らす高杉を見て李野はその頬をぐりぐり押す。


「昔から素直じゃないなぁ。照れんでもいいのに」
「……やっぱ犯す…」
「あ!申し遅れたッス。私来島また子って言います」
「私は武市変平太と申します。ちなみにフェミニストです」


互いに自己紹介を終えると、何やら外が騒がしくなった。

そして今度は新たに背中に三味線を背負ったサングラス男が現れた。


「晋助、白夜叉と桂が乗り込んできたでござる」
「……チッ…」
「…銀時と小太郎か…」
「ん?やっと起きたでござるか、緑の鬼人。…いや“殺戮の悪魔”」


男、河上万斉の一言に李野はギラッと河上を睨みつける。


「……その名で呼ぶな」
「敵を切り付け戦場を駆る姿は鬼とされ、だがその裏ではその惨さ故悪魔と表される程の強さ…」
「………おい主、名を名乗れ」
「これは失礼した。拙者は河上万斉でござる」
「そうか……拙者はお主が嫌いだ」


その言葉に全員がポカンとするが高杉は一人静かに煙管を吸う。

李野はベッドから立つと来島に歩み寄った。


「来島殿、拙者は帰るから案内を頼む」
「え!?でも…」
「またな、晋助」
「………ククッ…ああ…“またな”」


李野は高杉に微笑むと、河上に一睨みしその場を去って行った。


「……拙者は何か気に障る事をしたでごさるか?」
「…耳に付けてるもん外せばわかる」




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