女心
李野が落ち着いたところで妙が来、今日はもう帰っていいとの事。
李野は着替えて桂と共に外に出た。そこには地面で伸びている銀時がいてそれをつつく神楽と地味に普通に立つ新八がいた。
「そこ地味いらなくない!?」
「元気なったアルか?李野」
「ああ、すまなかったな」
「――いててて、あー酷い目にあった」
やっと目覚めた銀時が首を鳴らしながら起き上がった。
「あり?あの超絶美人は?悪い事しちゃったし、俺謝りたいんだけど」
「「「「………」」」」
「ん?李野?何だよ“目にもの見せてやる”とか言って結局出ず仕舞いかよ」
「「「「………」」」」
もはや何の言葉も出ない四人だった。
「………帰るか」
李野の一言で銀時以外の全員が頷いた。
「…でも李野いいアルか?本当の事言わないで。知ったらきっと銀ちゃん腰抜かすネ」
「…もういいさ、終わった事は」
「でも…」
「何だその赤いの」
尚食い下がろうとする神楽を遮り、銀時が李野を指差した。
「は?赤いの?」
「そこだそこ、首筋んとこ。虫にでも刺されたか?」
「!!…っまさかさっきの…!!」
「さっき?」
「!!」
李野はハッとし、咄嗟に手でバッと首筋を隠し耳まで真っ赤になった。銀時にはそれが先程の美人と重なった。
「……まさかさっきの美人…」
「〜〜〜!!」
李野は耐え切れず脱兎の如く走り去った。
呆然と立ち尽くす銀時。
「………どういう事だヅラ…」
「…ハァ……貴様に酌をしていた“美人”は正真正銘李野だ」
「………」
「ちなみに俺は一目でわかった」
「…何で言わねェ…」
「「「気づかないお前が悪い」」」
最後は三人揃って言い放った。
銀時と神楽が帰ると李野はどこにもいなかった。いや、いた。
「おい李野〜俺が悪かったって。いい加減出て来いよ〜」
「……死ね」
「銀ちゃーん、早くしてヨ。私の寝床ないネ」
「んなのこいつに言え」
李野は押し入れに閉じこもっていた。
「銀ちゃんが傷ものにしたんだから責任とれヨ」
「はァ?だいたいなァ、キスマーク如きでギャーギャー騒ぐんじゃねェよ。中二の男子ですかコノヤロー」
ダンッ
「地雷踏んだネ銀ちゃん」
「………」
「女の子は色々とナイーブなんだヨ〜」
銀時は頭をかきながら更なる説得を続ける。
「だいいち飯とかどうすんだよ。食べないとお前死ぬぞ」
「………生きる」
「コントしてる訳じゃないんだけど」
「…風呂も入った。帰ってすぐ。特に首筋を念入りに」
「地味に傷つくんですけど」
「銀ちゃーん」
「今度は何だよ」
「もう私眠いヨ。李野がそこで寝るんなら私李野の布団で寝る」
「おい、」
銀時が呼び止めるのも聞かず、神楽はお休みぃと襖を閉めた。
「………別に…」
「あ?」
「…別に拙者は怒っている訳ではない…」
「じゃあ何なの?ナイーブな女子事情ですか?」
「………その、」
「………」
「…か、顔を会わせづらい…」
「……はァ?」
「っだから、その、思い出したら顔が熱く……」
その途端押し入れの戸が勢い良く開かれた。
まさか開かれるとは思わなかった李野は目を丸くしたが、銀時と目が合った瞬間かぁっと赤くなり両手で顔を隠す。
だが銀時はその手を掴むとぐいっと引き寄せた。
「なっ…ちょ、うわっ」
そして李野の顔を自分の首筋に押し付けた。
「んん!?ん〜〜!!」
「そのまま強ォく吸って〜」
そして漸く離されると、
「これで満足か?」
「!!?」
銀時の首筋には李野よりは薄いが同じ赤い痣の様なものができていた。
「…あ…拙者は…何て事を…!!」
「お前女装したら結構稼げんじゃね?」
「〜〜っだからお主はモテんのだ!!」
李野はずかずかと歩くと、襖を力強く閉めた。
「…え、俺ここ(押し入れ)で寝んの?」
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