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オバQ


李野は何とかその場を言いくるめ、攘夷浪士の案内で桂の元へと歩いている。


「いやー、助かった。今日は親切な者に沢山会えて、拙者はついてるなァ」


一人でハッハッハと笑う李野の前で先程の3人はコソコソと話している。


「……おい、いいのか?本当に連れてっちまって」
「大丈夫だろ?桂さんの仲間だったって言ってるし」
「てことは攘夷戦争も経験してるって事か?」
「いや、あんなハッハッハは生き残れねェよ」


そうこうしてる内に桂一派のアジトへと着いた。


「着いたぜ」
「……こう改まると緊張するな…」


男が扉を開けると、ぬっと白いペンギンの様なものが出て来た。


「!エリザベスさん」


エリザベスはじっと李野を見ると、プラカードを出した。


「“そいつは?”」
「あっこいつは桂さんを探してるって言うんでその…」
「“連れて来たと言う訳か…”」
「………主ら…攘夷浪士の癖おって天人などと手を組んでおるのか…」


今まで黙ってた李野が眼光を鋭くさせた。


「おまっエリザベスさんに何て事を…」


ドカッ


エリザベスがプラカードを李野に叩き付る。だがそれをさらりとかわす。


「……一つ言っておくが、拙者は天人が大嫌いなんでな…容赦はせんぞ」
「“こっちも桂さんを狙ってるなら容赦しない”」
「拙者は小太郎の敵ではない」「“信用ならないね”」


ジリジリと間合いを保つ二人。3人がハラハラと見守る。
すると二人の間にあった扉が開かれた。


「エリザベス、何をしている。そろそろ蕎麦を食べに行く時間だろう」
「!……その声は…小太郎か…?」
「む、誰だ貴様」


桂からはドアで李野が見えない。


「“桂さん下がって下さい”」

ドコォッ


「ふんごォ!?」


エリザベスはプラカードで桂を殴り扉の奥へと捩込み扉を閉めた。


「っ何をするエリザベス!!こら出さんか!!」


ドンドンドンッ


「…どうやらお主を倒さねば会わせてはくれない様だな…」
「“当たり前だ”」
「じゃあ、俺らも手を貸しますよ!!エリザベスさん!」
「“お前らは手を出すな、これは俺の戦いだ”」
「エリザベスさん…」
「…すげェ…なんか今だけ眉毛が太く見える…」
「俺らは桂さんを出さない様、扉を死守します!!」
「“うむ”」
「…久しぶりに骨のある戦いが出来そうだ」


李野は腰に差してある木刀を構えるとエリザベスに切り掛かった。


「……何か感じ違くね?」
「あァ…まるで鬼の様な目ェしてやがるぜ…」
「エリザベスさん行けェ!!」
「おい!出せと言っている!!おい!!何なの!?ねェ何!?いじめてるの!?ねェいじめてるの!?反抗期なの!?」
「ちょっ桂さんうるさいっすよ!!集中して見れない!!」
「やっぱそうだよね!?集団いじめとか質悪いよホント!!」



「主、やるな」
「“お前もな”」


ガンガンッ
ドガッ


ボコーンッ


「「「あ!!」」」
「……プラカードが…」
「…折られた……」


李野は尻餅をついたエリザベスの首元(らしき所)に切っ先を当てた。


「!?エリザベスさん!!」
「くそォ!!おのれ…!!」
「“手を出すなと言っているだろう”」
「でっでも…」
「“さぁやるならやれ、だがこいつらには手を出すな”」
「エ…エリザベスさん…!!」
「……」


李野は木刀を下げ腰に戻した。


「!?“…何を…”」
「…お主のその心意気……気に入ったぞ…」
「“!!”」


李野はエリザベスに手を差し出す。


「“今日の敵も5分後には友達だよね?”、だろう?」
「“…フッ……俺の負けだ”」


エリザベスは李野の手を取り立ち上がった。
両者の顔はとても清々しく、誰よりも輝いて見えた。


「…やべェ…俺、何か感動してきた」
「俺なんて涙ちょちょ切れてるよ…」
「最後の言葉は何か違ったけど…うん…そんなの気にしない…だって、清々しいから…!!」
「お主らもこの心意気を見習うんだぞ」
「「「はいっ!!」」」




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あきゅろす。
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