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出たァァァ!!


ガサッ


「「ぎゃあ!!」」


とうとう自分達の番になってしまった李野達は山の中程まで来ていた。


「…ただの風か。脅かすなよ。驚いてないけど」
「チッ……こんなのやってやれっか」


この二人は先程からこの様子だ。その二人の間の李野はほとほと呆れていた。


「……何故手を繋ぐ」
「ばーか、そんなの李野が恐くない様にしてやってんじゃねェか。別に俺が恐いからとかじゃないから。こいつはそうかもしれねェけど」
「んな訳あるか。俺は男としての役目を果たしてるだけだ」


とがしっと手を両方から手を握られ、おまけにピッタリと引っ付いてるもんだから歩きにくい事この上ない。


「李野ー、恐かったらすぐ言えよ、そん時は銀さんが担いでダッシュで下山してやるからな」
「主らのお陰で全く肝が冷えんわ」
「てめェそりゃないだろ。こいつのせいにして自分が早くトンズラこきたいからって」
「あれェ?そういう土方君は脂汗酷いけど。マヨのコレステロール肌から滲み出てるけど」
「んだと糖分が。てめェこそ糖分滲み出てんぞ、大丈夫かァ?」
「………」


こいつらは何なんだ、またループしだしたぞ。もういいや面倒臭い。




そして何事もなく三人は頂上へと着いた。目の先には祠がありそこからお札を取るようだった。


「「おい、お前行けよ」」
「………」


祠に近づかない二人を後に李野は一人祠を開け、お札を取り出した。


「よし、取ったな。さァ帰ろう」
「ん?」
「うわっ!んだよ」
「……子供がいる…」
「「は?」」


李野の指差す方には確かに木の影からこっそりこちらを見る男の子がいた。


「「………」」
「迷子か?」
「……土方君、どう思うよ…」
「……見てないふりだ…」


珍しく意見が一致し、頷き合うと李野を見たが、そこには誰もいなく顔を上げるとすでに李野が男の子に話し掛けていた。


「逸れたのか?」
「……」
「…うーん、歩けるか?」
「……コク…」
「よし、拙者が連れて行ってやろう」
「ばっ!止めろ!!取り憑かれっぞ!!」
「俺らにまで迷惑かけんなコノヤロー!!」
「主、名は何と言う」
「………風汰…」
「そうか、拙者は李野だ」


騒ぐ二人を残して、李野は風汰と手を繋ぎ、スタスタと歩いて行った。


「「ちょ、待てコラ」」


二人も慌てて着いて行った。






「――…主、病気なのか…」
「……うん…もうお医者さんも治らないって…」
「………」


銀時と土方は李野達から二歩程後ろに離れた所から、風汰をちらちら見ながらこそこそ話す。


「おいおい…ありゃあもうスタンドフラグ立ってんじゃねェの?」
「…何とかしろ。てめェの連れだろーが」
「俺取り憑かれるのごめんだから」
「……俺もだ」


我関せずを貫こうと決心した二人を余所に、李野は風汰と話す。


「……拙者にもな、居たんだ。病気の弟が…」
「え…?」
「その弟はな、唯一拙者を見てくれたんだ。こうしてな、頭を撫でてやると喜んでいた」
「………」


李野が言いながら思い出す様に風汰の頭を撫でると、照れた様に俯く。


「…その…弟はどうなったの…?」
「…死んだよ…」
「!」
「………風汰、“病は気から”と言うだろう?」
「え…」


唐突な言葉に風汰は気の抜けた様な声を出す。


「弟は拙者と話さなくなってから状態が悪くなったんだ」
「………」
「…自惚れかもしれんが、楽しみが無くなったから死んでしまったのかもしれん」
「………」
「わかるか?」
「……うん…!」


風汰は強く頷き、その目には力が宿っていた。


もうすぐ人だかりという所で風汰は立ち止まった。


「ここでいいよ」


李野はしゃがみ、そう笑顔で言う風汰の頭を撫でる。


「病気は“自分”で治すんだぞ」
「うん、ありがとうお姉ちゃん」
「お、主にはわかってたのか」


笑い合う李野達を見て土方は軽く目を見張った。


「……あいつさ、ちょっと似てるよな。総一郎君に」
「…あ、ああ…」

「じゃあな」
「うん」


そう言って風汰は、去り際に李野の頬に一つ口づけをし、スーッと消えていった。


「見掛けによらず手が早いな」
「「き、消えたァァァア!!!」」



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