依頼だ
朝、新八が来ると李野に呼ばれた。
「どうしたんですか?李野さん」
「依頼だ」
「え゙っ嘘」
「嘘ではない。だが困った事に…」
深刻そうな李野に対し恐る恐る聞くと、
「銀時と神楽殿が起きない」
「………」
新八は一気に冷めた。
「何度も起こしたんだが、銀時は二日酔いらしいんだ。神楽殿は命の危険があって起こしきらんかった。拙者だけでは対応できない」
困り果てている李野の後頭部には酢昆布が突き刺さっていた。
「え…大丈夫なんすか…?」
「まぁ取り敢えず来てくれ」
どうやら李野は気付いていない様だ。
李野に連れられて来てみると、40代始めの気の弱そうな男が座っていた。
「粗茶を出そうにも勝手がわからんからな。これを出したんだが…良かったか?」
「……何でカレー出してんですか?」
「ほら、カレーは飲み物って言うだろ」
「それはデブの格言です!!こんな貧相な人に出したら胃がもたれちゃうじゃないですか!!!」
「新八君、客に失礼だぞ。ハゲ親父に謝りなさい」
「どっちも失礼なんですけどォォ!!」
男は溜息をつくと、立ち上がった。
「……やっぱり他あたります…」
「え!?ちょ、ちょっと待って下さい!!」
「…もういいんです…帰ります…」
「逃がすかァァァ!!」
「えっ何この子?目が恐い」
「李野さん!銀さん達たたき起こして下さい!!」
「銀時はともかく神楽殿は拙者の手におえん」
「この際あんたの命なんかどうでもいいから!!」
「意外に酷いな新八君」
結局李野は必死な新八に負け、起こしに行く。まずは神楽から。
「…か…神楽殿、依頼なんだが…」
「…う〜ん…五月蝿いアルな……」
「ぉがっ!!」
神楽に蹴られた鼻を摩りながら、後頭部に刺さっている酢昆布を抜いた。
「ほーら、主の好きな酢昆布だよー」
「ほえ?…すこんぶ?」
顔の前で酢昆布をちらつかせると神楽は反応した。そのまま移動すると神楽も着いて来る。
「ほ〜ら」
「…まてぇすこんぶ…」
そして洗面所まで誘導させると酢昆布を神楽の口に突っ込み、水を出して蛇口に指で押さえ神楽の顔に噴射させた。
「おぶぶぶぶ」
「タオルはここに置いとくぞ。後は自分で着替えなさい、今日は依頼だ」
「ほぉーい」
よし、次は銀時だな。
「――…大丈夫か?」
「お゙えっ」
布団に包まる銀時は真っ青だ。いつもなら遠慮せずたたき起こすのだが、銀時の苦しそうな表情を見るとそれもできない。
「今日は依頼人が来ているのだが」
「…無理だっつってんだろ……二日酔いやべェよ……」
「…いっそ戻したらどうだ」
「ぼえっ…今戻すとか禁句…」
一気に吐き出す寸前になった銀時を見て、李野は慌てた。そして、銀時を起こすと半ば引きづる、というか引きづって厠に急いだ。
「…お、お゙え゙ェェェぼろろろ」
凄まじく吐く銀時の背を摩る。
「ハァ…ハァ……あ゙ー気持ぢ悪…」
「……銀時変われ」
「…は?」
「お主の見てたら拙者もおぼろろろろ」
「おいおい大丈夫かおぼろろろろ」
貰いゲロは暫く続いた。
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