マダオ1
早朝、散歩に出てた李野は公園に立ち寄った。
「…平和だな……」
立ち並ぶ木々を見上げながらふとあの頃を思い出す。
何にもない所だったが、平和そのものだった。銀時がいて、小太郎がいて、晋助がいて……そして、松陽先生がいて……。
「…松陽先生……もう一度貴方と会ってお話がしたいです……」
李野はそっと目を閉じた。
「李野、嬉しい時は笑うんですよ」
先生……拙者は上手く笑えているだろうか…。
「ぉごえ゙っ」
なんてセンチメンタルになっていれば座ったベンチから声が。
「…ち、ちょっとお兄さん、どいてくんない?」
腰を上げればグラサンをかけたおっさんがいた。
「すまない、あまりに可哀相なキャラ故気づかなかった」
「いきなりそれ酷くない!?おじさんこれでも必死に世の中生きてんだよ!!?」
「お主あれか?ホムンクルスか?」
「ホームレスだから!!造られてないから!!」
李野は喚くおっさんの隣に座った。
「それにしても兄ちゃん見ない顔だな」
「ああ。最近こちらに来た」
「へェ。俺は長谷川ってんだ。人は俺を敬意を持ってマダオと言う」
「拙者は水野李野だ。それでマダオとは?」
「まるでダメなおっさん、略してマダオだ」
「それ敬意じゃなくね」
マダオマダオ……どこかで…。
「―…銀時が言っていたのはお主の事か」
「え?銀さん?…じゃああんたは銀さんが言ってた、新しい万事屋の従業員だ」
「銀時が?」
こないだ会った時、嬉しそうに話してたぜ、と笑いながら話す長谷川をまじまじと見つめる。
「そ、それで銀時は何て…」
「胃拡張娘と金が増えたってよ」
「………だと思った」
「そりゃもう“これ”に燃えてたぜ」
長谷川が手をくいくいと回し、パチンコだと現す。李野はそれを横目で見ながら溜息をつき立ち上がった。
「もう帰っちまうのかい?」
「すまないな」
「いやいや、こんなおっさんと喋ってくれてありがとな」
「こちらこそ、楽しかった」
「あ、ついでにこれ銀さんに渡しといてくれねェか?頼まれてたヤツなんだ」
そう言って渡された紙袋を不思議そうに見ていたが、了解と頷いた。
「してこれは何だ?」
「おいおい…それを聞くのは野暮ってもんだぜ?」
「?まあわかった。渡しておく」
長谷川に別れを告げ、李野は公園を後にした。
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