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ゴリラ2


サイ布があるし、その男も危なさそうだしな。


李野は木刀に手を添えると後ろを振り返る。


「太郎は下がって…」


だがそこに太郎はいなかった。慌てて前を見ると攘夷浪士達の前に飛び出していた。


「おっおいらのサイの財布返せっ!!」
「っあの阿呆!」


李野も急いで飛び出し、太郎の前に立つ。


「ど阿呆!勇気と無謀は違うんだ!!」
「だ、だって!!」
「ああん?サイ布がどうかしたかァ?」
「サイの財布!!」
「そのサイ布はこの子のものだ。拾ってくれてすまないな、返して貰おう」
「だからサイの財布!!」


近藤はそのやり取りを唖然と見ていた。なんせいきなり青年と子供が飛び出してきたのだから。


「ああこのサイ布か」
「サイのさい、いてっ!!」
「主は少し黙っとれ」
「はっ!残念だったな、拾ったもん勝ちだ!」
「…チッ……面倒だ」


李野がそう言った瞬間、攘夷浪士達は突然うめき声をあげ倒れていった。財布を持った男一人除いて。


「…!!」
「さあサイ布を返して貰おうか。ああ、何だっけ?拾ったもん勝ちだったか」
「ひっひィィィィ!!」


呆気なく男は財布を投げ出して走り去っていった。


「…お、お姉ちゃん…強いね…」
「おっお姉ちゃんんんん!!?」


驚きの声をあげたのは近藤だ。


「ん?そういえばお主、いつも妙殿の近くにいた様な…」
「ああ!俺は近藤勲ってんだ。真撰組で局長をやっている。助けてくれてすまなかったな!しかしお姉さん恐ろしく強いなァ!ちなみにお妙さんの婚約者だ!!」
「そうなのか!」


妙殿にも立派な人がいるんだな、後で祝ってやろう。と李野が妙に血祭りにあげられるのは後程。


李野は財布を拾うと太郎に渡そうとしたが、ピタッと止まる。そして目を見開き、


「フ…フリー●が空に浮かんでるゥゥゥ!!」
「え!?」


太郎は指差す方を振り返る。がそこには何もない。暫くして李野を見た。


「な、何もいないよ」
「今拙者が倒した」
「う、嘘っ!?」
「冗談だ」
「えェェェェ!!」


李野は財布を今度こそ渡すと頭を撫でた。


「一人で帰れるな」
「う、うん!!今度は絶対落とさないよ!!(…あれ?重い…?)」


疑問に思ったが母の事を思い出し、薬屋へと急ぐ。


「ほ、ほんっとおにありがとう!!」
「気をつけてな」
「う、うん!!」
「それともっと自分に自信を持て」
「!うん!!」


最後まで手を振る太郎を見送り、さあ帰ろうと李野も歩き出すと近藤がふっと笑った。


「粋な事をするんだなァ、あんた」


太郎の財布にこっそり金を入れたのを見た近藤が言った。李野はそれに対して何も言わず、去って行ったのだった。












「妙殿、結婚おめでとう」
「誰がゴリラの嫁だってェェ!!?」
「ぎゃあああああ!!!」




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あきゅろす。
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