局長もといストーカーもといゴリラ1
今日も依頼はなく銀時は――以下略。李野は散歩に出ていた。
すると道の真ん中で大声で泣いてる男の子がいた。周りの者は我関せずで、避けて通っている。多分その子の身なりのせいだろう。小汚い格好をしていた。
李野はそれにむっとしつつ、男の子に近づき、目線を合わせるようにしゃがんだ。
「どうした」
「うわぁぁぁん!!」
「泣いてちゃわからん。ゆっくりでいいから話しなさい」
頭を撫でながら笑顔で優しく言うと、男の子はぐすぐす鼻を啜りながらも話した。
「あのね、母ちゃんが病気で、ぐすっ、おいら働いて、薬代稼いだんだ。だけど落としちゃって、ぐすっ」
とぎれとぎれだったが、理解した李野は立ち上がった。
「どの辺かわかるか?」
「え…?」
「人数が多い方がいいだろう?。主、齢と名は」
「やっ八つ。太郎…っ」
「八つにもなって何時までも泣くな。在り来りな名のくせして」
「え…えェェェェ!!?」
驚く太郎を余所に李野は歩き出し、慌てて太郎は道案内した。
「こ…こっちだよ、お兄ちゃん」
「お姉ちゃんだ」
「えェェェェ!!?」
「た、多分この辺だと思うんだ!」
「うーむ、このあたりは人通りが少ないから拾われてはいないだろうが…」
少し探すが見つからない。
「どんな財布だ?」
「サ、サイの財布…」
「そこは珍しいな」
てっきり赤い巾着袋とでも言うかと思った。
「も、もういいよお姉ちゃん…おいらまた働くよ…」
「拙者はすぐ諦める奴は嫌いだ」
「う…」
「まだ一時間も経っていない。こうしている間にも主の母君は必死に病気と闘っているんだぞ」
「!!…う、うん!おいら諦めない!!」
必死に探す太郎を見て李野は微笑んだ。
「何だてめェら。俺はお妙さんで忙しいんだ。他を当たれ」
すぐそこで声がし曲がり角を除くと、ゴリラの様な近藤勲が10人程の攘夷浪士に絡まれていた。
李野はサッと太郎を背にやり、壁からそっと見た。
「お前局長だろう?仲間の分返させて貰うぜ?」
「…貴様ら攘夷浪士か」
その言葉を聞いて、李野は溜息をついた。
何をやっているんだあのヅラは。日本を守るどころか人間が襲われてるじゃないか。
「あっ…あれ…」
いつの間にか顔を突き出していた太郎が、攘夷浪士の一人の衿元を指差している。そこにはツノの様な物が見え隠れしていた。
「あれ…おいらの財布だ…!!」
「……サイ布があんな所に…」
「財布!!サイの財布!!」
[前へ][次へ]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!