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ほっとけない女


ぐっすり眠った李野は、漸く目覚めよく目を覚ました。と同時にくあっと欠伸がでた。


「でっけー欠伸」
「!……銀時か」


少し驚いたが、傍にいるのが銀時だと知ると安心したように息をはく。窓の外を見るに、真撰組が来てから一日は経っているようだ。


「ガキ共はうっせェから帰らせた」
「…よく言うことを聞いたな」
「そこなんだよ。まァてめェも落ち着いたことだし、ビジネスの話といこうや」


ビジネス?と頭に浮かべながらも、李野は取り敢えず体を起こした。その時、支えてくれた銀時にトキメキよりも感じた不信感。なんか裏があるぞこいつ。


「さて、ここで思い出してみよう。銀さんが頑張ったことを」
「…はあ?」
「出張サービス含めてこれでどうだ!」


ビシッとつき出された二本の指。なんのこっちゃわからない李野は、首を傾げる。


「何言ってるんだ?お前」
「またまたァ、とぼけないでよ李野さーん」
「(なんだこいつ)」


すりすりと手を合わせ厭らしい顔で体を寄せてくる銀時。李野は若干(というか本気で)引きながらも、ピンと思い付いた。

そうか、こいつは金をせがんでいるのか。


「…どうしようもない男だな、まったく」


呆れ果て、文句の一つも言えやしない。一気に疲れたような気分になった李野は、また寝転がった。


「……最初から報酬目的か」
「当たり前だ。ガキ共もこれで納得したんだからな」
「ハァァァァ…」


これでもか、というぐらい大きくため息をついた李野は半ば投げやりにわかったと頷く。それに銀時がニンマリと笑ったのを、李野は見ていなかった。



「…あ、そういえばヅラと辰馬は―――」


あれから見ない顔について尋ねようとしたが、それは叶わなかった。


塞がれた口。李野の目の前に広がったのは銀色だった。




「………………」
「何アホ面してんの?わかったっつったじゃん」
「……は、金のことじゃ…」
「金じゃ足んねーんだわ。銀さんホント疲れたわけよ。だからギンギンしたいわけよ」
「はあ!?」


大口を開けて間抜けな顔の李野を見て、喉の奥で笑った銀時。彼が二本の指を立てたのは、まだ理由があった。


「あと、次は慰謝料だ。銀さんの一世一代のアレを、聞き逃してんだからな」
「ア、アレ?というか近い…!」


先程から鼻先が触れ合う程の近さで喋る銀時に我慢できずに彼の体を押しやる。全く動かないが。そして、あろうことか李野が寝ているベッドに乗り上がってくるではないか。
李野の抵抗は更に強くなるが、彼女は知らない。それが銀時のS心をくすぐっていることを。


「ギャー!! お前何するつもりだァア!! 降りろ降りろ降りむぐっ!!」
「うるせェ。銀さんに食われたいんですかァ?」
「!?(お願い誰か助けてェェエ!! 300円あげるからァ!!)」


うるさい口を手で塞ぐと、銀時は顔をどんどん近づける。李野は反射的に目を強くつぶった。




「―――てめーに惚れてんだよコノヤロー」


耳元に顔を寄せていた銀時は、そう囁いた。顔を上げ李野を見ると、大きく目を見開き、銀時を凝視していた。


「………」
「…もう言わねーからな」
「、え。まじ……?」
「大マジ。だからとっとと慰謝料くれや。さっきのよりふっかぁいディープなやつを」


今だ唖然としている李野の顎を掴み、目線を合わせる。口は笑っていても目が笑っていない表情に、李野の顔は引きつった。


「ちゃんと応えられるかな〜」
「……なっ何に」
「さぁてねぇ」


舌なめずりをした銀時は、あっという間に唇を合わせた。角度を変え深くなる口付け。舌が差し込まれ、やっと我に帰った李野は、辺りを見渡す。
やがて、一筋の光を見つけた彼女は、藁にもすがる思いでそれに手を伸ばした。


「ん、ふぅ…!(助けろ馬鹿勝犁ィ!!)」


頭上近くにあるナースコールに伸ばした手。だが銀時がそれを見逃す筈もなく、伸ばされた手を自身の手で抑え込んだ。


「は、他の野郎のことなんざ考えられねーようしてやるよ」
「ヒィィイ!! 考えてませんんんん!!」


涙を流しながら頷く李野。銀時は不敵に笑うと更に深く口付ける。室内には、李野のこもった声とドタバタと暴れる音しかしなかった。





「――あーあ、私も綺麗なお姉さんと……」


外では、こう愚痴りながら勝犁が人払いをしているのであった。



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