一件落着 肝試しから戻ってきた銀時と土方は疲れきった顔をし、逆に李野は晴れ晴れとした顔をしていた。 どうしたんだろう。と思った新八であったが、どうせ最後までギャーギャーと騒いでいたんだろうと自己完結した。 あれ、でも何で李野さんあんな笑顔? 「何かあったんですか?李野さん」 「ん、少し少年に勇気を与えただけサ」 「サ、って」 「…おい李野……まさかお前ェ気づいて…」 「握った手が尋常じゃないくらい冷たかったからな」 「「………」」 「?」 こうして波乱の肝試し大会は幕を閉じた。 それから数週間が経ったある日。万事屋にある一家が訪れた。 「……は?」 「おぉ」 李野は少し目を瞬かせ、銀時は青ざめた。 「お姉ちゃん!」 それは忘れもしない、山で会った風汰であった。だが李野に抱き着いてきたその子はちゃんと実態もあるし、温かみもある。 「…風汰…か?」 「うん!僕ねっ!治ったんだ!!病気!!」 「本当か!?」 「お姉ちゃんのおかげだよ!!」 喜ぶ風汰の後ろでは両親だろうか。喜ぶ姿を微笑ましく見ている。 新八と神楽は不思議そうな顔をしていた。 「銀ちゃん」 「どういう事ですか?」 「あ…あーまァ、かくかくしかじかで…」 「成る程、かくかくしかじかアルか」 「いや、かくかくしかじかしかわかってないから」 両親の話によると、風汰は状態が悪化してから意識不明になっていたそうだ。 両親は医者に覚悟する様言われ、悲しみにふけっていた。 ところがつい数週間程前、突然風汰が目覚め、しかもみるみる内に回復していき先程退院したという事だった。 「―…じゃあ、その銀さん達が見たのって…」 「生き霊アルな」 「あー良かった。てっきり幽霊に取り憑かれたと……あ、言っちゃった」 「うんうん、“病は気から”だな」 李野は満足そうに頷いた。 「…でね、お姉ちゃん…」 あのね、と言葉を濁す風汰はもじもじとしている。隣の母親はほら、と優しく次の言葉を促している。 「うんこカ?便所ならそこ行って右アルヨ、坊主」 「たわけェェェ!!」 新八の鋭いツッコミが入った所で風汰は意を決して顔を上げた。 「お礼に、李野をお嫁さんに貰ってあげる!!」 万事屋の面々は目が点になった。 「いつか僕が立派な男になったら迎えに行くから!!これ予約ね!!」 「はあ」 その意気込みに李野はつい気の抜けた声が出た。風汰は、ぎらっと銀時を睨めつけビシッと指を差した。 「だから!!白髪の兄ちゃんになんかうつつ抜かしたら駄目だからね!!白髪の兄ちゃんも絶対李野に手を出さないでよ!!!」 「は?何で俺?てか銀髪ですが」 ポカンとしていた李野は、一方的に睨む風汰を見てやがてクックックと笑い出した。 「僕、本気だからね!!」 「約束はできんが、わかった。拙者がこの白髪にうつつを抜かさなければ考えてやらん事もない」 「だから何で俺?てか銀髪ね」 絶対だよ!!と言い、風汰達家族は万事屋を去って行った。 「強敵出現アルな、銀ちゃん」 「何で俺?意味わかんねェ」 そう言って頭をかく銀時は、今だ楽しそうに笑っている李野を見て今度は首を摩った。 「ぼやぼやしてたらその内李野さん嫁に行っちゃいますよ」 「俺に言うな」 新八の一言に李野がピクッと反応したのは誰も見ていなかった。 Next [前へ] [戻る] |