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どーげざ



「――ったアルかこのマダオ!!」
「そうですよ!! 李野さんこんなボロボロじゃないすか!」
「そうネ! ほら、なんかスーハーいってるアル…。李野苦しいアルか? 今楽にしてあげるネ……」
「やめろォォオ!! それ酸素マスクだからァァ!!」
「ギャーギャーうっせェぞてめーら。起きちまうだろーが」


……うーん、うるさい…。なんか今いい夢見てたような気がするのに……。


だァァれェェだァァア……。



「っ!? なんだろう今物凄い寒気が、」
「李野!? 目が覚めたアルか!?」
「………」
「なんとか言えやコラァァァア!!」
「あがががが」
「ちょっやめてあげェェェエ!!」


目を開けた瞬間、遠慮なしに肩を揺さぶられてた。あ、今嫌な音がした。


「う、神楽…殿……?」
「っ!心配させやがってこのバカ娘…!!」
「……新八、君も…」
「…!! 新八でいいです。“君"だなんて他人行儀ですよ」
「ふんっ、特別に神楽と呼ばせてやるヨ!」
「……そ、うだな…」


声がこもっているのがわかる。このマスクのせいで上手く話せないのがもどかしかった。


どれだけ眠っていたのだろう。何故か、彼らに礼を言ってからの記憶がない。なんだろう。思い出すなともう一人の自分が言っている気がする。

そして酷く眠い。


「まだ休んどけ。てめェが心配するこたァもう何もねーんだ。心置き無く寝れんだろ」
「……そういえ、ば、お前、何か言っていた、様な…」
「安らかに眠れ」
「ゴフゥゥウ!!」
「何やっちゃってんのアンタ!!」


鳩尾に衝撃が走り、私は強制的に眠らされた。



「………――てんだよ…。だから…いい加減……目ェ開けろよ…」



銀時は一体何を言っていたのだろう――。





「――あーあ、李野さんまた眠っちゃったよ。生きてますかね」
「死んだら私が穢土転生の術で甦らせるアル」
「口寄せとか封印とかいいからてめーら出てけ。うるさくて敵わねーわ」


しっしっ、と手を振る銀時に不満をあらわにした新八と神楽。遥々広島まで来たのに、この扱いはない。


「結局私らも管理人の被害者ネ! お前らばっか活躍しやがってヨォ。私がいたら李野は無傷だったアル」
「そうだそうだ!僕はこの銀魂で貴重なツッコミだぞ!! もっと出番を増やせ!!」
「李野がどうこうじゃなくて、出番が欲しいだけかよ」
「そんなことはないアル。私達、李野が心配で心配で…。だから銀ちゃんのなけなしのコレでここに……」


神楽がよよよとハンカチで目元を押さえながら、懐から出したのは一枚の茶封筒。“へそくり"と書かれたそれに銀時はハッとした。


「お前…何故それを……!!」
「私はそんな鈍い女じゃない。夜中にこそこそニヤニヤしてたら一発ネ」
「てめェ…!! 俺が何の為にコツコツとその金を貯めてたと思ってやがる!結野アナのフィギュア!! しかも限定水着バージョンだぞコノヤロー!!」
「フッ、甘いな銀ちゃん、私の目を欺いたと思ったら大間違いネ。ソファーの中なんざチョロイもんヨ」
「く…っ、見破られるとは…!普段使っている所にまさか隠しているとは思わないであろうと、ソファーをわざわざ裂いてそこに忍ばせ、編み目も完璧だったのに…!! 裏をかいたのが間違いだったと言うのか……!?」


悔しそうに壁に拳を叩き付ける。神楽はフハハハハと勝ち誇った笑いをしていた。やがて銀時は諦めたように表情を暗くすると、新八に向き直った。


「悪ィぱっつぁん、やられたよ俺。だけど俺…これでも必死だったんだ。限定だけに大層な値が張るときた。…だから、だから……!!」
「もういいですよ銀さん、何も言わなくて」
「新八…」


柔らかく笑った新八は背中を向けると、仕方ないといった感じで一つ息をはいた。


「僕の給料から差し引いて貰って構わない、って……なるかァァァア!!」
「ぶべらぁぁぁ!!」
「てめーら今すぐ土下座しろォオオ!! 読者様の貴重な時間と電気代とパケ代と諸々を無駄にしてしまったことを謝れ!! 何この無駄なやり取り!! バカでしょあんたら!!」
「けっ、どーせアタイらは唯のページの埋め合わせに過ぎないどーしよーもねークズなんだ。謝ってもしょうがないヨロシ」
「そーだぞ新八。なんだったらお前が謝れ」
「なんだったらって何だよ!どういう経緯!?」
「「どーげざ、どーげざ」」


「うるせェェェェ!!」


病室のドアを蹴破って入ってきたのは、顔中に青筋を浮かばせ白衣をきた勝犁だった。


彼のトレードマークとも言える薄紫色の髪と透き通った蒼い目も、怒りに満ちている様だ。


「病院ではお静かにって学校で習わなかったか!?」
「いや、アンタが一番うるせーよ」
「ハイハイもう散った散った! 今から検査っすからこれで飯でも食ってきて下さい!」


勝犁が万札を病室の外へと放り出すと、一目散に子供たちはそれに飛びつき出ていった。


「……坂田さん」
「あァ?」


頭をかきながら出ていこうとした銀時を勝犁は呼び止めた。


「あなたは甲斐性なしの塊みたいなモンっすからね〜」
「え?いきなり失礼じゃね?」
「ご存知っすか?“従兄弟合わせ"って言葉を」
「………知らねーな」


勝犁が不敵に笑むと、同じく銀時も口角を上げたのだった。



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