[携帯モード] [URL送信]
激昂



「――ハァ、ハァ、ハァ……」


銀時は諦めなかった。

何度自分の息を吹き込んでも李野は息を吹き返さない。それでも彼は根気強くやっていた。何度も、何度も。
他の三人はそれを止めるでもなく手伝うでもなく、ただそこに佇んでいるだけだった。


「…クソッ……!!!」


銀時は、李野の血が付いた口元を乱暴に拭うと、床に拳を叩き付けた。するとドタドタと慌ただしく誰かが登場し、その人物は膝に手をついて息を整えている。


「……勝犁殿」
「ハァ、ハァ…遅くなってすみません…! なにぶん日頃全く動かないもので、!!?」


顔を上げた勝犁が見たものは、血溜まりに沈み動かなくなった李野で。


「……は? なんすかこの状況…。……李野様?」


呼び掛けてみても返事がない。勝犁は愕然と固まった。彼の後からきた一人の下僕も目を疑っている。ハッと我に帰った勝犁は李野の元に駆け寄った。


「どいて!!」


銀時をどかすと脈を取ったり、瞳孔を確かめたりする。そして医者として出した結果、李野の死は明確なものになってしまった。


「……見ろよ。こいつ、死んでも人形みてェな面してらァ」


笑いを含ませた銀時の言葉に、勝犁はカッと頭に血が上るのを感じた。


「ふざけるな!! 何の為にあんたらがついてった!あァ!?」
「………」
「…オイオイおめェさんよォ、てめェは何もしてねェのによく言えるぜ」
「なんだと…!?」
「やめるんだ勝犁殿!」
「晋助もじゃ!」


横から口を挟んだ高杉に彼の怒りの矛先が向く。高杉はそれを面白そうに口元を歪め、まるで挑発しているような、否、確実に挑発していた。



桂と坂本が両者の間に入る中、銀時は横たわる李野の傍らで俯いていた。


「……なァ、今更だけどよォ、あん時ゃ悪かったな」


彼が謝っているのは、銀時と李野が喧嘩別れした時、心にもない事を言ってしまったこと。それと、



「……関係ねーとか思ってねェよ…」


本当は、坂本と李野の接吻を見たとき無性に腹が立った。心配し急いで帰ってみてみれば、男とイチャコラしている。だがそれとはもう一つ、違う理由があったのかもしれない。



「……てめェとは、ガキん頃から一緒だったな」


自分と同じで先生に拾われてきた存在は、自分と同じで容姿が他人と異なった。だから、仲間ができたとか、ガキくせェこと考えたんだな。ちらっとだけどな、ちらっと。


「………降参だわ…ホント……」



失って気付くたァ、よく言ったモンだな。







「………――惚れてんだよ…。だから…いい加減……目ェ開けろよ…」


李野の手を取り自分の頬にあてると、そう呟いた。





――ピクッ…

「!」


一瞬、ほんの一瞬だが、指が動いた様な気がした。目を見開いて彼女を見てみるが、依然として動かぬままだ。気のせいか、と肩を落とした。





「……………お前でも、泣くのだな……」






[前へ][次へ]

6/7ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!