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それぞれの想い


「――おい銀時」
「あァ?」


久々に背を預け合いながら息を整える。


「おめェさん、智恵の事は吹っ切れたんだろうなァ?」
「…てめェにゃ関係ねェだろうが」
「ククッ、そうかい。だが吹っ切れてねェ様だったら、李野は俺が貰う」
「………」
「おーおー、わしを忘れちょるぞおまんら。李野はわしと宇宙を旅するんじゃ。チビには渡さんきに〜」


張り合い出した二人はどちらが多く敵を倒すか勝負し始めた。そんな二人を余所に、銀時は残り少なくなった敵を倒しながら、思いに耽る。




「銀ちゃん、大好きだったよ」


「拙者の事どう思っている」




「――死ねェェエ!!」
「っ!」


やべ、と零しながら不意を付いてきた天人を受け止めようとしたが、その前に相手がどさりと倒れた。


「……後はよろしくとか抜かしといて、結局出て来てんじゃねェかよ」
「お前がぼけっとしてるから、」


呆れた様に小さくため息を吐きながら、また新たに流れ込んできた天人達を迎える為、背中を合わせる。


「てめ、引っ込んでろよ」
「少しなら動ける。主治医にも了承を得たしな」
「なんつー医者だよオイ」
「細かい所は勝犁に任せておけば大丈夫だ。あいつは頭が切れる」


確信の篭った声音に銀時は随分信用してるんだなと言い、それに対し李野は家族だからなと返した。そして李野は、背中越しではあるがきちんと言っておこうと話し始めた。


「…銀時。今これを言うのは、不謹慎でしかも今更なんだが…」
「……んだよ」
「――私は銀時が好きだ。兄としての親愛ではなく、一人の男として恋い慕っている」
「…知ってる」
「だろうな。……この際だ。私は智恵になんか遠慮しない」


返事は待ってやると不敵に口角を上げ、敵に突っ込んで行った。それを気配で捉えながら銀時もまた、ため息。


「…ったく、全員勝手過ぎなんだよコノヤロー」









――敵を倒しながら着実に前へと進んでいく一行。だが、どこから沸いて出て来るのか倒しても倒してもキリが無い。


「(…まるで戦争だな……)」


季節は冬だというのに汗が止まらない。李野はその嫌な汗を拭いながら、今と昔との情景が重なる思いでいた。


「……毛利の奴…、雇ったのは春雨だけではないな……!?」


そう確信した李野は、ギリリと奥歯を噛み締めた。
両親の身が心配だ。


やがて追い込まれ五人は囲まれてしまった。四方八方、天人で埋め尽くされている。


「……どっと出て来るとは聞いたが、…どういう事だ李野」
「めんごめんご」
「「めんごじゃねェよ!!」」


桂と銀時、両側から怒鳴られる。


「…デカブツ、てめェ戦う気あんのか」
「アッハッハッハ!あるに決まっとるじゃろ! わしゃあ決して銃を落としたんじゃなかっ。男と男、拳の勝負をしたかったんであって、その、何と言うかぶべらァァ!!!」


その時、小さくうめき声が聞こえたと思いきや李野が咳込み始め、その場に膝をついてしまった。


「「「!?」」」
「李野!!」


桂がしゃがみ込み李野の背を摩る。肩で息をするのを心配そうに見つめ、大丈夫か問う。


「……少し無理したのかもしれない……大丈夫だ、心配ない」


ゼェゼェと息をしながら安心させる様に口角を上げて見せる。

じりじりと迫り来る中、どうしようかと策を練る五人。だがそれも杞憂に終わった。




「「「ウオオォオオォ!!」」」
「…あれは…」


天人達の後ろから下僕達が攻めてき、李野達の通り道を作ってくれたのだ。


「李野様!この天人共は我等にお任せを!!」
「…お前達……」
「ですから李野様は先をお急ぎを…ってギャアアア!! 李野様が倒れられている!!」
「何!? しょしょ勝犁様を呼べェエ!!」
「ちょ、騒動しなくていいから!!」


慌てて止めると下僕達は少々不満げだったが渋々頷いた。


「…じゃあ頼んだぞお前達。各自死なない様に」


元気よく返事した彼等に李野も頬が緩む。少し頼りなさげに立ち上がり天守までの道を見据えた。


「…よし、行くか……」
「その体でか?」
「…大丈夫だ……」
「全然説得力が無いぞ李野」
「なんなら俺がお姫様抱っこでもしてやろうかァ?」
「チビにできるかや? ムリムリ」
「あァ…?」


すると突然李野に浮遊感が起こり、何事かと咄嗟にしがみついた手を見れば、白い着物だった。

「な…」


そして李野を抱き上げた銀時はそのまま天守に向かって全速力で走り始めた。


「どわァァア!! ちょっ早っ落ちる!!止まれ!!」
「待たんか金時!!なんでおんしがその役目を担うがか!!?」
「チッ…!」
「貴様ら俺を置いて行くな!!」




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