[携帯モード] [URL送信]
絶望


ドカッ!


目の前を赤い閃光が走ったかと思うと、高杉が吹っ飛んで行った。


「ぐっ…。チッ…、デカブツがやってくれる」


体制を立て直す高杉が睨む先には、片膝をついて着地を決めていた坂本がいた。


「黙れチビ!! 李野の唇は渡さんぜよォォオ!!!」
「何年経ってもうぜェな、おめェさんは」
「おおおんし!!わしが止めんかったらどこまで行くつもりだったがか!!あわよくば●●●までか!?●●●●までか!!?」


唖然とする李野に構わず、坂本は李野の手を握り顔を近づけた。


「しっかりせんか李野!!」
「……辰馬…?」
「………おまん…大丈夫がか?」


心配そうに顔を覗き込む坂本を今度は高杉が横から踏み潰した。


「言った筈だ。俺が先に目ェ付けた女だとよ」
「じゃかあしいチビ助。おんしあれじゃろ?あっちもチビじゃろ」
「――やめんか、いい歳してみっともない」


第三者の声が掛かり二人はそちらを向く。そこには廊下に正座し目をつぶる桂がいた。


「貴様らも大人だろう。よいか?俺達が今しなければならぬ事は、今まで一体何をしていたか読者の皆様に説明を、」
「はいはいうぜェから。そういうのは別に読者も気にしねェんだよ。いや気にしないで下さいなんだよ」


その桂の頭を踏み越えて、銀時が現れた。


「しかし銀時、そういうものを怠っていてはこの小説は雑なものとして捉えられてしまうではないか」
「いいんだよ。だいたいここはただの自己満でしかねェんだ。諦めろ」


それもそうかと立ち上がった桂は、高杉に視線を移した。


「…まさか高杉がいるとは思わなんだがな」
「そりゃ悪かったな」


息を吐くと、今度は李野に移す。


「――…李野。あれだけで俺達が引き下がるとでも思ったか?」
「………」


李野は俯き、坂本の手を払うとそのまま四人と距離を取った。


「……何故そうやって他人に構う。もう放っておいてくれと言った筈だ」


李野は相手の出方を伺ながら続ける。


「…意味がわからない。お前達も、…松陽先生も……」
「……李野、貴様はわかっている筈だぞ。俺達が何故ここにいるのかも。どうしてこうもお前に構うのかも」


李野は顔を僅かに歪ませる。


「…勝犁殿から全て聞いた」
「……それで?……やれる事は全てやった。…だが何もかも上手くいかない……よかれと思ってやった事も全て裏目に出る……」
「諦めるな。お前はまだ戦え、」
「うるさい!!またお説教か!? やれる事は全てやったと言ってるだろう!!」


李野は息を整えると拳を強く握った。


「だが結果…私はただ掌で躍らされていただけだった。…もう手遅れだ」



――…そうだ…私なんかいてもいなくても同じだ。否、いても迷惑なだけ。私がいなければ智恵も死ななかった――。



そう思った李野は懐にゆっくり手を忍ばせた。


「……もう疲れた……」
「!?? 李野、何を…」


李野が取り出した懐刀に息を呑む音が聞こえた。


「……もう……死にたい……」
「「「「!!?」」」」
「馬鹿な事はやめろ!!死んでどうするつもりだ!!」
「李野!!」
「うるさいうるさいうるさい!!!…もう…!!…疲れた……!!!」


震える声は泣いているのか。目元は髪の影に隠れ伺えない。

李野は刃先を喉元に宛てた。慌てて駆け寄ろうとするが来るなと怒鳴られる。


「…何故私の髪と目は人と違う…親と違う……。普通に生まれてきてさえいれば……!!………っ」


李野が歯を食いしばる。


「(………さよなら…)」




[前へ][次へ]

12/13ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!