なんかオリキャラめんどい
次第に近づく襖に、無意識に心拍数と息があがる。掌を一度強く握り締め、深呼吸をした。
「――……李野でございます。…失礼します」
上座に座る男女に深々と頭を下げた。
「お食事中失礼致します」
「「………」」
何も答えない二人は李野に一秒足りとも関心を示さず、ただ食事を続ける。
同じく上座で食事をするのは、こちらを気にするそぶりを見せる夏目。そしてその父、毛利夏元。夏元はこちらに好奇の目を向けている。
「これはこれは李野様。ご一緒に食事でもどうですか?」
「父上」
「なんだ夏目。私はただお誘いしただけだ」
「せっかくですが、私はもう済ましましたので。どうぞお構いなく」
李野は上っ面だけの笑顔を夏元に向けた。
「いや、それにしても我が愚息をこんな出来たお嬢様の婿にして下さるなんて、光栄でございます」
よく言う、と李野は心の中で吐き捨てる。
「……いえ、こちらも毛利殿と仲が深められて何よりでございます」
静かに告げる男はこの福山城の城主、福山藩藩主水野勝俊だ。そして李野の実父であった。
その隣、冷めきった顔で座るのは李野の実母で政子だ。
「それにしても、李野様は他の者に比べて“特異”な方ですが、どちらの血を濃く引いておられるのですかな?」
「父う、」
「この者は誰の血も引いておりません。そして勝手に家を出ていき、勝手に戻ってくるとんだ身の程知らずです。このようなうつけは毛利様のご子息には勿体のうございますのに」
「いやいやご謙遜を」
無機質につらつらと述べる母に李野は肩を強張らせる。
「それでは本題に入りましょうか。私どもとしては明日にでも籍を入れたいのですが、本人達に異議は?」
「…ありません」
「…同じく」
形だけのやり取りを終え、それぞれの親同士が話を進める。その中で聞き捨てならない言葉が李野の耳に届いた。
「――…今、何と……」
李野の信じられない様な声音に親達は話を止めこちらに目を向けた。
「……江戸を…制圧する……!?」
「お前は口を挟むな」
「っ、それはまことですか…!?」
「………」
父に睨まれ怯むも、負けじと視線を返した。無言を肯定と解した李野は夏元に詰め寄った。
「どういう事ですか!?」
「江戸を制圧。そのままの意味ですが?」
「何…!?」
「……春雨と手を組み幕府を倒し、そして江戸を、この国を我が手中に納めるのが真の目的。…水野家はただの道具に過ぎん」
「!!!」
李野だけに聞こえるよう呟かれた言葉。幕府からも信用が厚い水野家を利用するという事だった。
「っ貴様…!!!」
怒りをあらわにした李野は、夏元の胸倉を掴み壁に押し付けた。
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