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不器用な男の愛情※


乱暴に組み敷かれ思わず目をギュッとつぶる李野。それに構わず夏目は荒々しく口づけた。


「……っ!!」
「…はっ、…君は僕のものだ…!!」


夏目は李野の前では一人称が違った。それは李野だけに本性を晒しているという事でもあった。


「…あの時…長身のサングラスの男がこちらをじっと見ていた。…いや、あれは睨みつけていたな…」
「………」


夏目は李野の着物の襟首に手を入れ勢いよく肩まで下げた。そこには痣が幾つもあり、痛々しくも扇情的でもあった。


「…それと君は……あの白髪の男に…惚れでもしているのか……?」
「………その様な事は…」
「ないと言えるのか!!?」
「ぐっ…!!」


肌に手を滑らせていた手を首に宛てがい、急速に締め上げる。


「…もう一度言う…! 君は僕のものだ……!!!」
「…うっ……か、はっ」


ぐっと下に押さえ付けられ気管が狭くなる。じわりと生理的な涙が滲み、いよいよ苦しさの限度を超えた所で手が離された。


「…っゲホ、ゴホゴホゴホ!」


咳込む李野の頬に手を伸ばし、こちらに向かせ息も許さぬ程唇に食らいつく。


「……はっ、…ふ……ぅ…!!」


口づけにいっぱいいっぱいになっている李野。夏目はそのまま太股の内側に手を這わした。


「!! や…!…まっ…」
「もう待たない。最初から…こうすればよかったんだ」


そう言うと帯に手をかけた。それを遮る様に手首を掴む李野。


「ぁ…、お待ち、下さい…!! 嫁入りまで操を貫くのは我が家の習わし…!」
「そんなもの関係ない。それに水野家の全権を握っているのは我が父だ…!!…それとも…」


夏目は李野の耳に口元を寄せると囁いた。


「…御両親がどうなっても……?」
「!!!」


目を見開いた李野はやがて抵抗を止めた。


「……いい子だ…」


そのまま首筋に吸い付くと、新たに痣を増やした。


「……っ」
「……愛してるよ、…李野…」
「………」


何度愛の言葉を囁いても絶対に答えてくれない李野に、悔しい様な腹立たしい様な感情を覚え、喉を鳴らすと衣服を全て剥ぎ取った。




頼むから……!! 僕だけ見ててくれ……!!




己の下で声を押し殺し、震え、涙さえにじます李野に、全ての感情をぶつけるのだった。














――情事後。

既に気を失っている李野の隣に倒れ込むと、息を整えた。


「………李野…」


軽く揺するが全く起きる気配がない。少し無理をさせてしまったかとため息をつく。


「…すまない……」


少しばかり眉を寄せて目を閉じる李野の髪をすく。


「……昔から君は綺麗な顔をしていた…」


思い出されるのは幼き頃、この城に父と共に来た時、偶然離れで李野を見掛けた情景。


「…一目惚れだった……」



君は弟と縁側で何かを話していた。まるで違う兄弟で、弟はよく笑うのに君はにこりとも笑わない。

だが弟の楽しそうな表情を見て、目を細めて頬を緩ませたほんの一瞬の表情が、儚げでとても綺麗だった。


その後、その弟が死に、加えて君が生死不明の行方不明だと聞いた時は、どうやってでも捜し出そうと思った。



だけどこんな形で再会するなんて。



父は“あの”水野家を手に入れたと喜び、僕に李野をやると持ち掛けてきた。


それが始まり。


「……こんな事………苦しませたくなかった筈なのに……!!」


裏を返せば、それ程までにこの子が欲しかったという事。

それを…、わかって欲しいんだ。君に。



「本当に僕は君を愛してるんだ…!!…なのに何故…っ、どうして僕を見てくれない……!!」


夏目は李野の肩を寄せると、自身の胸に抱いた。そして肩を震わし、静かに涙を流すのだった。




所詮彼も、親の都合で駒にされた、憐れな子供に過ぎなかった。




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