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せかんど


「親も兄弟も家族もいない天涯孤独の俺にゃあ、てめェの事もてめェに何があったかなんざさっぱりわかんないね」
「離せっ!」


身をよじって逃げようとする李野。


「人の話聞く時はちゃんと目ェ見やがれ!」
「!」
「俺からも言わして貰うが、俺もてめェの態度が昔から気に食わなかった。全てに絶望した様な面、諦めきった態度、全部全部嫌いだった。…自分がこの世で一番不幸みてェな面ァしやがってよォ。そういうのが一番腹立つんだよ俺ァ」


ビクッと肩を揺らす李野に構わず、語気を強めた。


「家族に疎まれるのは辛ェだろうがなァ……それでも親がいる…こんなとこまでわざわざ駆け付けてくれる仲間、友がいる…。てめェには沢山あるっつー幸せを…てめェが一番わかってんだろォが!!」
「!!」


李野は目を見開き、やがてゆっくりと目線を横にしその目に桂と坂本を写した。


「………」
「…ガキ共が待ってんぞ」
「……あそこは私の居場所ではない」
「ったく、てめェは分からず屋かコノヤロー。いいか李野、てめェの居場所なんてのはなァ、てめェが知らねーところで出来てるもんなんだよ。それをてめェで見てねェだけだ」
「………」


顔を伏せた李野は震える手で自身を掴む銀時の手首を弱々しく握った。


「…………………親が……天人に……命を握られている…」
「は?」
「…これしか方法がないんだ。……頼むから…邪魔をしないでくれ……」


下僕の一人に声をかけられた李野は、表情を戻すと銀時に頭突きを食らわした。


「ほげっ!!?」
「どけ、無礼者」


ふんと鼻を鳴らすと銀時を退かし袴の土埃を払った。


「おま…!! 石頭か…っ!!」


頭を押さえ悶える銀時を一瞥すると、再び胸倉を掴んだ。


「んだよまだ……」


そして顔を近づけ銀時の唇に自分のそれを合わせた。

今度は桂が坂本を抑える。


李野は、やがて唇を離すと半ば放心状態の銀時を見据えた。




「………さよならだ。…バカ侍」


銀時を桂達の方に突き飛ばすと、下僕からバズーカを奪い構えると銀時達に放った。

命中はしていないが当然ぶっ飛んだ三人は、福山城の敷地外へと繋がる門の側へと墜落した。


「構えろ!」


李野の声でやや反応が遅れるも銃を構える下僕達。


「待て李野!貴様どうするつもりだ!!」
「……もう会うこともない。友のよしみだ、命までは見逃してやる。……春雨のやつらが来る前に早く行け」


銀時と桂が春雨に恨みを買っている事を知ってか、そう言う李野は再びバズーカをぶっ放した。


「チッ、ここは一先ず引くぞ!」


四方八方から銃口がこちらを狙っており、もはや後方にしか逃げ道がない。


桂は後ろ髪を引かれる思いで、まだ放心してる銀時の襟首を掴むと門の外に出た。


「何をしている坂本!!」
「………」


何故かじっと李野の住む屋敷を見据えていた坂本は、桂の声でやっと動くと一緒に出たのだった。


「銀時!! 李野はお前に何と言っていた!!」
「………」
「いい加減しっかりしろ!」
「…やっべ…、銀さん、ふぁーすとかもしんねェ…」
「おまん、その年でちゅうもまだじゃったがか?」
「そういう意味じゃねェよ。なんつーの?…せかんどばーじん的な?」
「あァ、ふ●きょんね」
「貴様らふざけるのも大概にしろォォ!! もう俺死んでやる!!死んでやるからな!」




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