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「くっ…!」


もう何度目かもわからない戦の今日、李野達は苦戦を強いられていた。


敵の作戦なのか、銀時、桂、坂本。李野、高杉、智恵と分散させられ、しかもここぞとばかりに敵が多い。


「チッ!銀時達はどこ行きやがった」
「多分あっちの方。…結構離れてるかも…」
「あやつは自分の女の傍にくらいいられないのか」


李野が吐き捨てる様に言うと、智恵は苦笑いを浮かべた。


「……まずいな。敵が半端ねェぞ」
「もしやこれが敵の作戦かもな。大丈夫か、智恵」
「ん、大丈夫」


李野は智恵を気遣いながら、敵を倒していく。


「あの、李野?私は大丈夫だから、その、」
「拙者は主らの恋のきゅうぴっど的なやつだからな。…それに…親友だから護るのも当たり前だ…」
「ちょ、鼻血でそっ」
「おい、俺の前でいちゃつくな」


その時、猛獣の雄叫びが聞こえ振り返ると、天人の新たな戦力なのか、規格外の大きさの天人がそこにいた。


「……何アレ…有り得ないんだけど…」
「……晋助」
「…ああ、ここは退くぞ」


頷き合い一気に走り出した三人。その後ろから地響きという名の足音が追ってきている。


「ちょっと!!追ってくるんだけど!!」
「想定内デース」
「李野ボケないで!!つぼるから!!」
「ぎゃあぎゃあうるせェぞ智恵」
「ぎゃあぎゃあ言ってませんー。この際だから高杉残ってよ、男でしょ」
「ざけんな」


言い合い、敵を倒し、忙しくも退散する。すると、その天人が飛び上がるのが音でわかった。

足を止めると、目の前にその天人が着地した。


「しつこ!スキャンダルが見つかった女優のパパラッチぐらいしつこ!」


その天人は息遣いも荒くこん棒を上げると、その先を李野に向けた。


「「「!!?」」」
「フー…フー……“殺戮の悪魔”…」
「!」
「…あいつ、正気じゃねェぞ…」
「……先に行け」
「!! 何言って、」
「あのデカブツは鈍い。この三人じゃ、素早さは拙者が一だ」


尚もそんな事できる筈がないと、智恵が言う中、高杉は無言で李野を見た。李野は高杉に小さく頷く。


「大丈夫だ、必ず帰ってくる。それに、怪我をしたら智恵が治せばいい」
「!!……勝手なんだから…!!」
「……すまねェ」


二人は後ろ髪を引かれる思いで、先へと向かった。


その二人には天人は見向きもしない。


「…ほぉ…、やはり拙者が目当てか。何者だ貴様」
「……“殺戮の悪魔”…」


高杉の言った通り正気ではない様子に、眉を潜めた。


「……水野……福山藩……」
「!!?……一体何者だ…!?」


李野は動揺を隠しきれないでいた。

















「――……李野…」
「………」


一方高杉達は、敵や仲間の死体が転がる戦地の喧騒とは離れた場所で李野を待っていた。


「………あ!」


李野がふらふらと歩いて来るのが見え、急いで駆け寄った。


「あー、疲れた」
「大丈夫!?どこも怪我ない!?」


よろける李野を支える智恵。高杉は腕を組み、後方へと目をやる。


「…上手く撒けたみてェだな」
「まぁな。だが晋助の言った通り正気の沙汰じゃなかった。…多分、麻薬か何かの類いだろうな。あんなのがこの先増えたら、やっかいだぞ」


高杉は何かを考える様にし、やがて二人を見た。


「とりあえず寺に戻るぞ。銀時達は大丈夫だろ。あいつらは斬られても死なねェしな」
「だな」
「即答かい!つぼる!!」




そう、その時は気が緩んでいたのかもしれない。


例えいきなり背後から敵が襲い掛かかろうと、普段の李野と高杉なら気づいた筈だ。


例え死体のフリをした天人が背後から襲い掛かろうとも――。





「っ李野!!!」
「なに、」
「李野後ろだ!!!」


一歩前を歩く智恵が李野を振り返ると、刀を振り上げた天人がいた。

智恵の叫びに気づき、更に一歩前にいた高杉も目を見開き叫ぶ。


李野も背後の殺気に気づき刀を使おうとするも、先程の疲れでふらついてしまった。


「しまっ…」


高杉は刀を抜き走るが間に合わない。

くそっ!!、と吐き捨てた瞬間。



ドン――




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