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こーいこいこい



「…………」



李野の頭の中には先程の銀時と智恵が照れながらも笑い合っていた光景が、ぐるぐると回っている。


モヤモヤは無くなったが、今度は黒っぽい感情に支配されていた。




立て続けに意味のわからない感情に支配され、李野は知らず眉を寄せていた。


「………もしや……拙者は銀時が……好きなのか……?」
「なんだと!!?」
「!!!」


条件反射で刀に手をかけ、後ろを振り返ると、唖然とした桂がいた。


「…何してる、ヅラ」
「ヅラじゃない小太郎だ。じゃなくて、お前、さっきの本当か…?」
「…………本当じゃない、嘘だ」


李野はそう言うと、息を吐き去ろうとしたが、桂が行く手を阻んだ。


「薄々そうなんじゃないかと思っていたが、やはり自覚はなかったか…」
「何が」
「惚けるな。さっき自分でも言っていたではないか」
「言ってない」
「言った」
「ゆうとらんゆってるんじゃボケ」


暫し言い合い、李野は無言で桂を見据える。桂はため息をつくと、やれやれと肩を竦めた。


「認めなくないのはわかるがな、」
「話にならん。もう寝る」


李野は引き止める桂を無視し、去って行った。


「……李野のあの様な顔は初めて見たな…」



辛そうに顔を歪める李野を俺は見た。市●悦子じゃない、桂だ。














――それからの李野は、気づいた感情を振り切る様に、一段と敵陣に突っ込む様になった。

その無鉄砲と身勝手な行動に、仲間達は白い目で見だした。

だが、それでも李野があげる成果には助かっているのもまた、事実であった。






「ヅラ」
「ヅラじゃない桂だ。何だ高杉」
「とうとう言われたぞ。“最近の行動は目に余る”ってな」
「……李野の事か…」
「ああ。…チッ、ったく昔から何考えてるかわかんねェ奴だよ」



「智ぃぃ恵ちゃぁぁぁぁん」
「ちょ、銀ちゃん、ぐるじっ」



「……あっちはあっちで、うぜェしよォ」


イチャイチャが激しい銀時達を見て高杉は青筋を浮かべた。


「ところで李野はどこ行った」
「先程坂本に引きずられて行ったぞ」
「あの野郎…」


更に青筋を深ませ、桂の示した方へと足を向けた。




屋根へとたどり着くと、坂本の馬鹿笑いが聞こえた。


「おいバカ、少しこいつと二人にしろ」
「なんじゃあ!?おまんにゃあわしと李野の邪魔はさせんぜよォ!!」
「うぐっ」


肩に手を回された李野は息を詰まらせる。


「クソもじゃ」


高杉の真剣な表情に坂本は珍しく空気を読み、最後に李野をぎゅっと抱擁すると屋根から飛び降りて行った。


「………おめェ最近、どうかしたのか」


高杉は李野の隣に座ると、夜空を見上げながら言った。


「…別に何も」
「そうかい」


李野は、高杉の顔をちらりと見ると目線を下げた。


「晋助は優しいな」
「あァ?」
「何か言われたのだろう?拙者は最近身勝手だからな」


高杉は李野を見る。その表情は“無”だった。


「お前わかってんなら、」
「これはもう癖かもしれんな。子供の頃から一人で稽古をしていたんだ。共闘などできないよ」
「………」


伏し目がちに言った李野はぐいっと酒を飲んだ。高杉にも酌をしてやる。


「それに、…嫌われるのには慣れてる」

「…………お前よォ」




「恋でもしたか」


突拍子もない一言に酒を吹き出した。


「…主は、この話の流れで何を…」
「何となく」


高杉は酒を飲むと、


「……まァあれだ。俺ァお前の味方だ」
「………ぷっ」
「…何笑ってやがる」
「ふ、顔、赤いぞっ」


高杉の顔を指差して笑いを堪える。


「くくくっ、主は、昔から照れ屋だな」
「………チッ」


高杉は舌打ちをしながらも李野の頭を乱暴に撫でた。


「照れ隠しか」
「うるせェ。てめェは笑っときゃいいんだよ」
「……努力するよ。皆と戦える様に」


屋根の上で笑い合う李野達。


だが、皮肉にも突っ走る事を極力抑えた李野に、悲劇が起こる。




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