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恋はハリケーン



皆が寝静まった頃、李野は一人寝ず庭にいた。

いや眠れなかった。



「……モヤモヤする…」



何だこの胸を渦巻くモヤモヤは。まるで心臓が天パになったみたいだ。…それじゃモジャモジャか。


あー、気持ち悪。



「――うわっ!びっくり、してねェ」
「…何だ、銀時か」
「何だじゃねェよ、こんな時間に一人で何してんだ。ゆうれ…だと思ってない」
「………」
「……眠れねェのか…?」


何か憂いげな李野を見て、銀時は眉を寄せる。
戦中の夢でも見るのか。


「ああ、何か…モヤモヤするモヤ」
「まァすっげーモヤモヤする事はわかった」
「……こんなの、生まれて初めてだ…」
「そりゃあよかったな」
「よくない、気持ち悪い」


そう吐き捨てた李野は長くなった髪を払い、もう寝ようと歩き出した。


「…………なァ」
「厠にくらい一人で行け」
「ばっ!違ェよ!!そうじゃなくてだな、ほらっあれだ」
「…?」
「あー、うん、ほら、お前智恵と仲良いいよな?」


李野はコクッと頷く。


「こんな事頼むのもあれなんだが、お前しかいねェっつーか…」
「はっきりしない男だな、一体何だ。まさか、怖いから添い寝してくれなんて言わないだろうな」
「だから違ェって!だァーっもー!!智恵に俺の事どう思ってるのか聞いて欲しいっつってんだろ!!」
「いや初めて聞いたがって……え…?」


銀時は照れた様に顔を逸らし、頭の後ろをかいていた。


「……主、もしや智恵を好いて…」
「シャラーップ!!」
「ふごっ」
「おまっ!!でかい声出すなよ!!」


お前の方がうるさいと眉を寄せながら銀時の手をどかし、その顔をまじまじと見つめた。


「な、なんだよ。銀さんだって恋の一つや二つするんですぅ」
「………」
「……お前の言いたい事もわかるぜ?こんな時にだもんな…」


銀時は自嘲するように呟く。

まったく同じ二人に李野は額に手を当て大きくため息をついた。


「…全く……お似合いと言うか何と言うか…」
「は?」


そして大きく息を吸うと、

「智恵ェェェエエエェェエエ!!!」
「は!?ちょ!えぇぇ!!?」


突然の李野の行動に目を白黒させる銀時を余所に、何事かと智恵だけじゃなく皆がドタドタと駆け付けた。


「どっどうしたの!!?」
「敵襲か!?」


慌てていたが、銀時と李野がこんな夜更けに一緒にいるのを見て怪訝な顔をした。


「はっ!!まさか…銀ちゃん……いくら溜まってるからって…」
「え!?何いってんの!!?確かに溜まってはいるけどさァ…」
「銀時てめェ…」
「いや違うからァァ!!」


とんでもない誤解をされそうになっていると、李野が智恵の背中を押し銀時の前に立たせた。


「言え」
「「は?」」
「そのままの意味だ。言え。二人して同じ話を同じ日にするな、気持ち悪い」


周りで見ていた者達は意味がわからない。だが、当事者二人はわかったのか、目を見開いて互いに見つめて合っていた。


「“恋は盲目”とは、よく言ったものだな」


最後にそう言うと、二人は顔を赤くし目線を逸らした。


「…チッ、そういう事かよ。しょうもねェ、寝直す」


高杉をはじめ、皆が次々と去って行く。他人のイチャイチャなど見たくも聞きたくもない。

桂もやれやれと肩を竦め皆に続こうとした時、二人の様子を見て頬を緩めていた李野がやがて表情を無くし、違う方向へと去っていくのを見た。




「李野〜!わしらも銀時んらみたいに……あり?」




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あきゅろす。
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