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つまり、


日も沈み、今夜は体を休めようと言う事で各々が好きに過ごしていた。


李野と智恵は縁側に二人で並んで座り、月を眺めながら他愛もない話をしていた。周りには二人しかいない。


「――…智恵、銀時をありがとう」
「いいよいいよそんなの。それが私の役目だからね。………」
「…智恵…?」


急に黙り込んだ智恵に首を傾げその横顔を見た。智恵は少しして意を決した様に息をつくと李野をバッと見た。


「やっぱ銀ちゃんの事、大事?」
「…?当たり前だろう、大事に決まっている。それに小太郎も晋助も辰馬も智恵もだ。ここにいる仲間も皆大事だ」
「…っじゃあ!…銀ちゃんの事どう思ってる?」
「どうって…兄みたいな奴だと思ってるが…」


至極当たり前の様に言った李野に智恵は安堵したのが見て取れた。益々李野は首を傾げる。


「…あれ、それじゃ高杉と辰馬の事も」
「ああ、兄の様だと思ってる」
「え、でもあいつら普段から李野にべったりだけど何も思わないの?」
「…あれは愛情表現の一種だろう?」


李野の様子からすると完全に気づいていない。智恵は、報われない二人を哀れに思った。


「…ま、李野が幸せそうだからそれでいいや」
「何がだ?」
「いやいやこっちの話。………それでね、」
「?」
「……こんな時だから、胸にしまっとこうとも思ったんだけど…」
「何だ、はっきり言え」
「…私……銀ちゃんの事が好きみたい…」
「……え…」



突然の告白に暫し固まった。


「……お主…あんなのが好きなのか…?」
「なっ!あんなのって!銀ちゃんは優しいし、いざという時は凄くかっこいいし、気も合うし!それに、」
「わかった。惚気はいいから」
「のっ惚気!?」
「で、主はどうしたいのだ」
「??どうって?」


李野は昔、亡き師に教わった事を思い出す。


「……拙者はそんなものした事ないからわからんが、恋とは苦しいものらしい…」
「………」
「…で、どうしたいのだ。恋仲になりたいのか?」
「………だけどさ、やっぱこんな時に気持ちを伝えても…って思うし…」
「……こんな時と言うお主にも頷けるが、こんな時だからこそなんじゃないのか?」


自嘲する様に笑った智恵に、李野は自分の考えを述べた。


「いつ死ぬかもわからないこんな時だからこそ、後悔のない様にしないといけないんだ」
「………」
「…もし、伝えぬまま死んでもしてみろ。主の魂がこの世に留まり化けて出るぞ。銀時はそういった類が苦手だからな。嫌われるぞ」
「うっそまじで!?」
「まじで」


だから、と李野は続ける。


「銀時に言ってしまえ。楽になる」
「……でも、銀ちゃんは私の事どう思ってるかわかんないし…」
「どうだっていいそんな事。悔いの無いよう生きねば人生損だぞ。…と、先生が言っていた」
「…そう、だよね」
「万が一断られでもしたら、拙者が渾身の力で慰めてやる」
「っうん!ありがとう!!やっぱ李野に相談して良かった!」


取り敢えず練習でもして来いと言い、李野は智恵をこの場から立ち去らせた。


「………驚いた…」


素直に応援したいとも思うし、好きだと言った時に頬を染める智恵も可愛らしいと思う。


だけど、




「……………何だろうな……」









このモヤモヤは。




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