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芽生え


そしてまた暫く経った。

李野と智恵は、お互いに無いものを感じ、お互いに尊敬し合い、大の仲良しとなっていた。


そんなある日。




「――おい!誰か来てくれ!」


珍しく声を荒げた李野の声が、拠点としていた寺の廃墟に響き渡った。


桂、高杉、坂本、智恵も含む志士達が急いで駆け付けると、銀時の腕を肩に回し息を荒げる李野がいた。


「どうした!!」
「銀時が…銀時が……!!」
「智恵!手当じゃ!」
「う、うん!」


坂本が手伝い、智恵と一緒に銀時を運び込んだ。


「一体何があったというのだ」
「…あ、う……銀、時が…拙者を庇って…!!」


たどたどしく言った李野はガタガタと小刻みに震えている。高杉は李野の頭に手を置いた。


「…奴は例え爆撃されようが死なねェよ」
「……拙者のせいだ……また一人で突っ走ったから…」
「とにかく銀時の所に行くぞ。大丈夫だ。見た所、大した傷じゃない」


ひたすら自分を責める李野を連れ、銀時の所へ向かった。













「……智恵…銀時、は…」
「大丈夫。傷は対して深くないから」
「…お願いだ…助けてくれ……頼む…」


一般的に言って傷は深い方だが、戦時中ともあればこんな傷はしょっちゅう見てきて治している智恵。

必死に頼む様子に少し目を丸くすると、柔らかく微笑み李野の手を握った。


「大丈夫!私の腕を信じて」
「……うん…」


李野は力無く頷くと、痛みに顔を歪める銀時を辛そうに見たのだった。






「――……うっ」
「!銀時…!?」


治療も無事終え、目を覚ました銀時。


「大丈夫か!?どこか痛むか!?記憶はあるか!?自分が誰だかわかるか!?お主は坂田銀時だぞ!!」
「ちょっ李野っ。そのボケ最高っ」


矢継ぎ早に問う李野に智恵は吹き出した。


「…ヘマァやらかしたな、もじゃ」
「っ、うるせー高杉コノヤローっいてて」
「じっとしていろ馬鹿者」
「そうじゃそうじゃ。傷どばっと開くぜよ!アッハッハッハ!」


銀時は智恵に支えて貰いながら体を起こすと、自分の傍らで悲痛な表情をし、俯いている李野に気づいた。


「おいおい何つー面してんだァ?」
「……すまない……拙者のせいで、傷を、負わせてしまった…!!」


声を震わせ、目をぎゅっとつぶった李野は小さく震えていた。

そんな李野に苦笑しつつ、頭に手を置いてやった。


「ばーか。俺がそう簡単に死ぬかよ。第一てめェなんか庇っちゃいめェよ。俺が勝手に斬られただけだ」
「何言って、」


確かに自分の名を呼び、腕を引っ張られたというのに。

言い返そうとして銀時を見上げた瞬間、高杉が頭に乗せている銀時の手を払い、坂本が李野を引っ張った。


「じゃあ李野が悔やむ事ァねェな。しっかり療養しやがれクソ天パ」
「ほれ、こんな天パほっといてわしんとこ来い」
「デカブツは引っ込んでろ。李野は俺んとこ来んだよ」
「チビは大人しゅうしてればよか」


李野を引っ張り合いながら部屋を去って行った二人に桂は呆れた様に笑んだ。


「全く…どいつもこいつも騒がしい奴らだ。…ん?」


銀時の視線に気づいてそちらを向くと顎で外を指し、出て行けと促している様だった。

智恵は医療器具を整理していて気づいていない。


「何故出て行かなければならぬ」
「ばっか、察しろよ!」
「え?何?」
「い、いや何でもねェよ。あ、ちょいと背中が痛むから診てくんね?」
「はーい」


背中に回った智恵に気づかれない様、しっしっと手を振った。


「(…ふっ、そういう事か…)」


桂は肩を竦め、部屋から出て行った。




やれやれ。どいつもこいつも…。




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あきゅろす。
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